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お金について考える。原田ひ香さん「三千円の使い方」を読んで思うことがありすぎる。

世間の流行りにいつも乗れない私。
ずっと気になっていた「三千円の使い方」という本をついに読んだ。

主人公は結婚を意識する年齢の独身女性。

専業主婦の姉と、専業主婦の母、夫に先立たれ年金生活の祖母が繰り広げる、ドキッとしつつも心温まるお金がテーマのお話だ。

主人公以外の3人は専業主婦、あるいは専業主婦を全うした女性なわけだが、お金に対するスタンスがそれぞれ違い面白い。

この3人以外に登場する女性たちもみな個性的だし、男性達もそこここに実際いそうなキャラで、妙なわくわくと他人のプライベートをのぞく罪悪感みたいなものがある。

しかし、お金のこと、それも、生きるため、死にゆくときのお金となるとどうにも切実だ。

貯金残高を見てヒヤッとしたり、年金が減って不安になったりするくだりはなんとも言えない焦りを感じる。

主人公の母親が、入院手術後に家事のできない夫に絶望したり、更年期障害で悩まされるシーンはもう、明日は我が身感がやばい。
その友人の熟年離婚の話がちょうどよく重なってきて、離婚も茨の道という描写も相まって、中年期の苦悩の濃ゆさをよくよく感じさせられる。

お金のこと関係なく、人生って難しいと思わされるのだ。

誰にでもあることなんだと思えば心強い。

それに、私の人生にもこんなことがあったよ!
と思い浮かぶ出来事が脳裏をかすめ思いもかけず人生振り返るきっかけになった。

私は奨学金を確か500万円は行かないくらいの額を独身時代に返し切った。

30歳くらいに転職した時辞めた会社の財形貯蓄や売却した持ち株で口座残高が増えた。銀行の個人向け営業さんから手紙が届いた。今思えば、奨学金の利息より、投資の利回りがよければ、ちょろちょろと奨学金を返済しつつ銀行の営業に乗っても良いかもしれなかった。

しかし、奨学金という響きが負担だったので、残高があるうちに一気に返してしまった。

今日返済すると決めた日に、昼休み、会社近くのATMに一円単位まで残額を振り込みに行った。清々しく、身軽になったあの日のことはよく覚えている。

奨学金を返したことで、そろそろ結婚したいなと思ったのも事実だ。お金がなくなったどころか、返済してもなお貯金があったし、投資もコツコツしていたし、転職して自信がついた私は人生に前向きだった。

しかし、現実は甘くない。
結婚相手が見つからなかった。
30歳過ぎて「性格も別に良くなく、かわいくもおしゃれでもなく、実家も細い、家事が好きでない芋娘」は、婚活市場では悉く惨敗。

しかも、一般的な男性より稼いでいたので、進んで家事をしてくれる男性を引き当てたかったがそんな都合のいい人はいない。

(夫曰く、そんな希少な人は3000万円とか以上稼ぐ、光り輝くスーパーウーマンとしかマッチングされないだろうとのこと)

しかしこれも今更よく考えたら、もっと若くて婚活市場で価値がある時期に婚活に励んだとして、奨学金を返済しているってだけで結婚相手が決まらない可能性もあったのかと思うと30ちょっとで一括返済してまだよかった。

そう、奨学金を子どもに借りさせる家庭で育ったことがマイナスになるというのだ。小説でもそういう示唆があった。

学生時代は全然そんなこと考えなかった。
確かにそう言う意見を持つ人もいるだろうし、「学費を子どもに払わせるような家庭と関わりたくない」というご家庭もあるのだろう。
親ガチャという言葉が頭をよぎる。

(うちの場合は、私が申し出て奨学金を借りた。別に、親に押し付けられたわけではない。)

「三千円の使い方」の中で、主人公の恋人は親が勝手に奨学金を借りたうえに返済を放り投げたと言う話が出てきた。

この恋人、主人公の女性やその家族まで巻き込んで(本人は自分が返すと言ってはいたが)恥ずかしくないのだろうか!だいたいこの親、子どもが社会人になってから突然返済を求めるなんてひどい!と勝手に憤ってしまった。

憤っても仕方ない。
人の人生だし。
ましてや小説の中の話。
奨学金って、厄介だ。
婚期を逃したり遅くさせる要因になる。
小説の中ではうまいこと収まったように見えたけど、主人公が今後円満な結婚生活を続けていけるのか勝手に不安になってしまった。
私なら、主人公の恋人の両親と良好な人間関係を築ける気がしない。

それは置いといて…
奨学金自体はありがたい制度だし、なくてはならない。ただ、使う必要のあるひととそんなことに縁のない人の間に分断を生むような価値観があることに気づかされる。

まあ、それが世の常だろうか。
そんな分断があちこちにあるに違いない。
年金受給者世代の中での分断とか。
世代間の争いとか。親子の争いとか。

できれば、人の温かい面に多く触れて生きていきたい。

そういえば、私も3千円くらいの買い物をした。

ずっとほしくて楽天市場の買い物かごに入れていたコーヒーを飲むためのマグカップ。

もし今私が死んだらこの買い物かごでこのマグカップも日の目を見ずに死に行くのかと思ったら1日でも多く使いたいと思ったのだ。あの世で3千円を払うこともコーヒーを飲むこともできないから。

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