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『もう明日が待っている』を読み終えて

私と彼ら

彼らの解散から、七年の月日が過ぎた。

当時、私は16歳。高校一年生だった。
最も多感な頃、心の拠り所であった唯一無二の最推しを失った。

学校で居場所がなくなった日
部活の先輩からいじめられた日
第一志望不合格が告げられた日

苦しいことの多かった学生時代を支えてくれたのは彼らの楽曲であり、彼らの存在だった。

ライブに行けば次のライブまでもうちょっと生きてみようかと思えたし、憂鬱な月曜日も22時から楽しみがあったから我慢できた。

彼らの楽曲を聴いて枯れるまで泣けば、学校への重たい足取りも少し軽くなったような気がしたものだ。

徹底的にアイドル徹底的に仕事人。
でも垣間見える絆の深さに、子供ながら惹きつけられていた。

2000年生まれの私は、彼らの成り上がりをリアルタイムで見てきたわけではない。

だが、そんな彼らが大好きで知りたくて、手の届く楽曲、映像、書籍、母親がいまだに呆れるほど買い漁っていた。

そんな私がなぜ、本書を発売後すぐ購入しなかったのか。(発売は2024年3月31日)

受け止められないと思ったからだ。

しかし、立ち寄った本屋でふと開いた目次に涙してしまい、こちらもいい加減受け止めなければならないと感じた。

またこの書籍の帯には、売上の全てを元旦に発生した石川の地震の義援金とすると記されていた。

東日本大震災発生後からあの無念の最終回まで流れ続けた、義援金募集の案内を思い出す。

当時はまだ子供で、自分のお金で寄付することができなかったけど、鈴木氏がもしそれを意図して売上を義援金に当てることとしたのなら、彼らの想いの継承に微力ながら協力することができる。

迷いは消えた。

内容について

微力ながら、彼らにもらったあらゆる恩に報いるため、書籍の内容については割愛したい。

そのわけは、一人でも多くの方にご購入頂き、彼らの想いの継承にご協力いただきたいからだ。

グループとしての形を失った今、ファンとして彼らにできる恩返しは他になにもない。

だから、エゴでも偽善でも自分にできる僅かなことを積み重ねたい。

ただそう思った。

一つ言えることは、本書は彼らの物語だということ。
決して、暴露本ではないということ。

彼らの選択によって開かれた未来

本書を読み終えた後、『夜空ノムコウ』が聞きたくなった。

咄嗟にYouTubeを開き私が選んだのは、彼らのそれではなく、彼らの後輩が歌ったもの。

彼らが解散して、もう二度と推しなんてできないと思っていた私に、昨年できた新たな推し。

その君が所属するグループが歌うものを選んだ。

彼らはどことなく先輩の彼らに似ている。

これから芸能界という大きな山を登って行く若い彼らにとって、こんな見られ方は嫌だろうが、私はどうしても後ろに大先輩の5人の姿を重ねてしまう。

皮肉にも同じ5人で構成される後輩の彼ら。

そして、担当だったHEROのパートを歌うのは、新たな推しとなった青色の君。

新たな推しの君との出会いも、君の所属するグループとの出会いも必然に思えた。

推しは然るべき時に向こうからやってくる。

その通りかもしれない。

そんな後輩の彼らが昨年ライブで『夜空ノムコウ』を披露した。

それがふと、聞きたくなったのだ。

形がなくなろうとも、彼らが創り上げた歴史は誰かの中で今もちゃんと生きている。

そのことを確認したかったのかもしれない。

世間からきつく当たられようとも、事務所に残留してくれたHEROのおかげで、後輩へと楽曲が受け継がれている。

全員で彼らを育てたマネージャーの元へ行っていたらそれは美しかったかもしれない。

でも、そうなっていたら今、この未来はあったのだろうか。

あの時傷を負って分裂していなければ、SMAPという名前が使われることも、後輩のHiHi Jetsが『夜空ノムコウ』を歌うこともなかったかもしれない。

だから私は、ファンにこの未来を残し散っていったSMAPの決断に深く深く感謝している。

辛かったし、悲しかったし、受け入れるのにこんなにも時間がかかってしまったが、やっと今日、全てを飲み込めた。

ありがとう。

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