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【息ぬき音楽エッセイvol.22】Mockyとノスタルジー by 村松社長

みなさまこんにちは。カロワークスの村松社長です。
全国的にお盆の季節、今年は久しぶりに故郷へ帰った!という方も多いようですね。

今回はそんな故郷と深いつながりのある「ノスタルジー」という言葉と、社長が愛してやまない一人の音楽家について、お話したいと思います。


さて、今日ご紹介する音楽家というのは、Mockyさんです。
本名はドミニク・サロレ、カナダ生まれのミュージシャンで、プロデューサー・アレンジャー・演奏家・ラッパーなど様々な顔を持つお方。

ユーモアと才能のかたまり!といった存在で、音楽を愛しているのはもちろん、音楽にも愛されているんだな…と感じるような人です。

ご本人名義で7枚くらいアルバムを出しているのですが、2002年頃の1st・2ndあたりはヒップホップ色が濃くて、かなり実験的&アングラな雰囲気でした。

社長がモッキーを好きになるきっかけになった、初期頃の曲をどうぞ。いま聴いても最高!そして笑える。

MOCKY「Micky Mouse Muthaf****s!」2004

その後2009年にリリースしたアルバム「Saskamodie」が話題になり、ジャンルを越えてモッキーの名前が世に知れ渡ることになりました。

このアルバム、それまでとのギャップがありすぎて正直「同じ人ですか?!」「オチはまだ??」とか言いながら聴いてましたが笑、大名盤であることは間違いありません。

MOCKY「Birds Of A Feather」2009

すっかりチル&リラックスになっちまったのか…と思いきや、たまに理解できない攻撃を仕掛けてくることがあるので、安心してはいけません。
いやむしろ「やっぱり同じ人だった〜」って安心してください。

MOCKY feat Nia Andrews「STOP ME」2017

モッキー様のご紹介が長くなってしまいましたが、彼の音楽を説明するときよく使われている言葉に「ノスタルジー」というのがありまして。

たしかに彼自身、セピアカラーやフィルム風のPVを出してみたり、アートワークを70年代風にしてみたりと、意図的にノスタルジーを取り入れているところがあると思います。
2018年から各地のヴィンテージ・スタジオを使ってレコーディングするというアルバムシリーズを始めたのですが、これなんかもまさにですね。

ノスタルジーは英語で「ノスタルジア(nostalgia)」といいますが、この言葉のルーツを皆さまはご存知でしょうか?

実はこの言葉、1688年にスイスの医学生が「nostos」(帰郷)と「algos」(心の痛み)というギリシャ語をかけ合わせて作った医学用語でした。
17世紀から19世紀にかけて、特に前線の兵士たちが感じる故郷への想いは、重大な研究対象、言い換えれば病気と思われていたそうです。

近代以降「ノスタルジー」という言葉から精神医学の観点はなくなり、日常的に使われるようになりました。
故郷を懐かしむ気持ちはもちろんですが、単に切ない・エモいみたいな意味で使われることもありますし、過去は良かった(いわゆる「懐古」)という文脈で使われると、少しマイナスな意味を持ったりもします。

いま現在は存在しない良いものに想いを馳せることがノスタルジーだとするなら、未来にノスタルジーを感じることもできるのではないか、などと社長は考えたことがあります。

モッキーの音楽は時々「ノスタルジックなようでいて、フューチャリスティック」とか「レトロフューチャー(=過去の人が考えていた未来)」とか言われたりするのですが、時間軸のどっち方向かわからないけど懐かしい感じがする…というのはわかります。

アメリカの社会学者だったフレッド・デーヴィスの本に『ノスタルジアの社会学』という、タイトル通りノスタルジーを社会学的に研究したものがあります。この本を紹介する”松岡正剛の千夜千冊”に印象的な一文があったので、引用してみますね。

本書の著者によると、何代か前のシカゴ市長のリチャード・デイリーは「私はノスタルジアの感じられる未来をつくる」とつねづね言っていたらしい。そこで著者はこの矛盾した言葉に関する感想を市民にインタビューしてみたそうだが、大半の回答者は「その意味はよくわかる」と答えたという。よく考えてみればわかることだろうが、どうもノスタルジアというものは過去に所属するでも未来に所属するでもなく、きっと何かの都合で想定できる時空との対話的な「あいだ」にひっかかっているようなものなのである。

0482夜 『ノスタルジアの社会学』 フレッド・デーヴィス − 松岡正剛の千夜千冊

最後の一文、まさにモッキーの音楽だ!と思ってしまいましたよ。
”何かの都合で想定できる時空との対話的な「あいだ」にひっかかっているような”音楽…。社長がレビュアーだったら使っちゃうかも。

それではまた次回!

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