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ファインダーで覗く札幌まつり。

6月14日から札幌では「さっぽろ祭り」が開催された、正式には北海道神宮祭だが、神宮の境内よりも中島公園で開催されるこのお祭りが札幌の短い夏の始まりを告げる。

札幌生まれ、札幌育ちのワタシはもちろん、お父さんも、おじいちゃんも、札幌まつりを嗜んできた。露店の規模も道内屈指で、毎年様々な露店が軒を連なり札幌の夜を彩ってきた、コロナ禍では3年間も開催されなかったが、去年より再会され多くの人で賑わった。

こういう露店を主体としたお祭りには日本人のDNAに刻まれた渇望があるように思える、ワタシのような若輩者から、おじいちゃんのような年配者までみなが心を踊らせ、幼い頃に体験した思い出をノスタルジックに引きずりながらお祭りを楽しむ。

綿飴、金魚すくい、リンゴ飴、射的、皆が同じビジョンで「どこかなつかしい」と口を揃える、世代を超えてここまで共感できる事があるだろうか?露店にはそんな不思議なチカラを感じさせる。

この日も午後から遅めの朝食を食べて、ゆっくりカメラ支度をした。
レンズは18-55mmのズームが取り回しがよいが、夜の撮影となると明るいレンズにしたかったのでDX35mm F1.8をチョイス。
ワタシは朝が苦手という事もあるが、今日は計画的に夜の露店風景を撮影する計画だった。

日本の伝統行事としての”お祭り”は夜こそが真骨頂であり、夜の闇と装飾の灯りが合間見える事で、祭りの持つ華やかさや優美さだけではなく、どこかエロチシズムを彷彿とさせる、そんな官能的な1枚を写真に収めたかった。

ワタシの撮影機材D3000はCMOSセンサーではなく、旧式のCCDセンサーなので高感度耐性は現行機に比べて格段に悪い、少しでも感度上げるとノイズが増してしまう。窓の無い施設や、夜の撮影となると苦戦を強いられる。しかし、こうした屋外のイベントについては照明がイベントを演出してくれるので夜でもなんとか撮影できる。

最新カメラの撮影画像を見ると、やはりISOの感度を高く設定できる分、夜の撮影でも昼のような露出で撮影している物をよく見かける。それでいて高感度耐性もあるため、非常にクリアな撮影が可能なのだろう。

しかしワタシは、祭りの優美さを伝えるにあたって”闇は暗く”という意識を持って撮影している、夕暮れ時でも照明がついていれば露出を照明に合わせて大胆にマイナスさせる、中途半端にマルチパターン測光に頼ってしまうと、シャドウ部が持ち上がってしまい白飛びも発生してしまう、何より写真に色気がなくなってしまうからだ。そうなるとISO感度は無理に上げる必要もなく、ワタシのD3000でも撮影を容易にする事ができる。

ワタシは闇の部分を強調する事で、照明が当たっている光の中に存在する時間がドラマティックに演出されると考える。暗闇の沿道に並ぶ露店の灯り、照明に照らされた看板や装飾が煌びやかに輝き、そこには祭りを楽しむ人々の笑顔が集う、そういう楽しい空間を適切に表現するには、灯りに照らされていない”暗闇”部分を上手く取り入れる事が重要だからだ。

そんな偉そうなゴタクを散々並べておきながら、この日は撮影に集中しきる事も出来ず、結局は食べ歩きが主体になってしまう。
目の前の華やかさに目を奪われて、ワタシが思い描いた空間としての”祭り”は表現しきれなかった、ワタシの悪い癖だ。
帰りの時間を見誤ると混雑に巻き込まれてしまう、少し早めに切り上げるべく、中島公園の出口へ足を進めていた、露店の際にあるお面屋さんの前に差し掛かった時、ワタシはふと振り返ってみた、すると暗闇の中に煌々と輝く空間がまるで蜃気楼のように見えた、現実と幻想の境目は何処だったのだろうか?
風に揺れるお面達が静かにワタシを見つめていた。

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