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父とモンブランと息子

昨日は同居の兄(バツイチで出戻り。男性でも出戻りっていうのかしら)?の誕生日だったので、老齢の父が杖をつきながら、バースデーケーキを近所のケーキ屋さんに買いに行った。父は長い間海外に単身赴任をしていたので、家族の誕生日を祝うようになったのは、ここ数年の話である。だからなのか、誕生日=特別!という気持ちが強く、どうしてもケーキを買わずにはいられない人なのだが、さすがに兄はもうとっくにイイ歳なので、ホールではなくバラで人数分買うのが定番となっていた。しかも全員同じモンブラン!
これは母の大好物で、愛妻家の父はケーキ=モンブランしか眼中にないのである。

ところが、その日は買いに行ったのが夕方のだいぶ遅い時間帯だったので、父のお目当てのモンブランはすべて売り切れていた。途方に暮れていた父に店主が「何かお探しですか?」と声を掛けた。父は「モンブランを買いに来たのですが、ちょっと遅かったかなぁ……」と言った。すると、「おいくつ必要ですか?」と店主。なんと、もうあと少しで閉店というタイミングにもかかわらず、わざわざ父のためにモンブランを作ってくれたのだ!
おそらく翌日用に材料はそろっていたであろうが、作ってくれるなんて!

夕食後、私は出来立てのモンブランをじっくりと味わいながら、息子にこのいきさつを話した。「じいじって人徳あるよね~。どんな人でも、じいじに対してはみんな感じ良いもんね~」と私が言うと、「そうだね」とめずらしく素直に同意する我が息子。実は息子は昔から“じじっ子”で、父の言うことはなんでもよく聞く。尊敬もしているんだろうなと思う。

息子が生まれた時期と父が仕事を引退した時期とがちょうど重なったせいもあり、急にヒマになって手持ち無沙汰になった父は、生まれて間もない息子をベビーカー(まだA型の頃から)に乗せて、よく散歩に連れ出してくれた。その際、父は息子によく話しかけたのだか、それはまるで大人と話すような語り口だった。
たとえば、犬のことをワンワンとか、車のことをブーブーなどとは絶対に言わなかった。消防署の前を通るときは「おや、ハシゴ消防車が停まっているね。ほらあそこにハシゴが見えるだろう。あの先端部分が屈折していてね、ほら、こんな風に伸びるんだよ……」などと、延々と話し続けていたものだ。そんな父のことを、わかっているんだかわかっていないんだか(わかっているはずないか💦)、息子はじっと見つめていた。
今では輸入禁止されている?ワニやアルマジロの剥製だの、ダチョウの卵だの、そのようなめずらしいはっきり言ってそんなもの家にあっても困る海外のあちらこちらから買い集めてきたものを片手にする父の大げさな自慢話を聞くのも、息子は大好きだった。(っていうかそんな話を聞きたがるのは息子ぐらいだったのだが💦)
父からもらったカナダの100ドル記念硬貨は今でも息子の宝物で、彼の部屋の棚の中央に鎮座している。

そんな父に、内面はともかく、外見はよく似ていると昔から言われ続けてきた私。ふと思いたって息子に聞いてみた。
「っていうかママも人徳あるよね?人様から理不尽な扱いをうけたことがあまりないもの!」
無視されるかなとおもったけれど、意外にも「うん、まあそうだね」と同意してくれた息子。
ひゃーめずらしい!
明日は雪かもね?
でも明日は卒業式の予行練習があるので、雪なんて降られたら困るなぁ。
凍てついた体育館で何時間もじっとしているのはツラいのよ、、、


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