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遺されたメッセージ

AIとクリエイターの共同制作による新作『ブラック・ジャック』の完成を知り、久しぶりに漫画雑誌を購入。

3年前にも、手塚先生の作品を学習したAIを駆使して作成した漫画『ぱいどん』が話題になった。

『ブラック・ジャック』は高校生の頃、夢中になって読んだ作品だったこともあり、懐かしく拝読。

生命の神秘。
正解のない問い。

作品の軸は変えていないようだった。

これから読まれる方もいらっしゃると思われるので内容の詳細は割愛。

印象に残ったのは、作中のピノコの台詞「人間てなんらの?(人間て何なの?)」。

これは永遠のテーマかも知れない。

『ブラック・ジャック』で私がもっとも好きな作品の1つが『助け合い』。

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異国の地で警察に捕まってしまったブラック・ジャックを、何の見返りもなく助けてくれた蟻谷さん。

何かお礼がしたいというブラック・ジャックに「お礼なんてとんでもない。同じ日本人同士じゃありませんか。困った時はお互いさまです。」と言う。

その蟻谷さんが窮地に陥った際、今度はブラック・ジャックが全力で助けるお話。

ラストで蟻谷さんの「なぜ私のためにこんなに良くしてくれたのですか?」という問い掛けに対するブラック・ジャックの答えが印象的。

「困った時はお互いさまです。あなたに助けられた時は、もっとうれしかった。」

……………………

普段は高額の治療費を要求するブラック・ジャックだが、この作品では、蟻谷さんからは一切お金をとらなかったと記憶している。

純粋に感謝の気持ちだけで行った治療が高尚に見え、先生と患者さんの気持ちが通い合っていて、読後感がとても良くホッとする作品だった。

あらためて作品を読み返してみると、手塚先生が今も生きてらっしゃるような気がするのは、作品に込められたメッセージがとても強いものだからかも知れない。

読後、時に気持ちにズシっとのしかかってくる作品もあるが、その裏に込められた優しさ、切なさ、やるせなさも同時に残る。

まるで現在の世の中を見据えたような作品もあり、読んでいて思わず背筋が寒くなることも…。

先見の明をお持ちだった手塚先生がご存命なら、その後も描き続けたであろう数多くの作品を、もっと読んでみたかった。


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