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ほしいものがたり その後

干し芋の商品開発を飽くことなく続けている私だが、前回書いたノートの結びに困り、続きを書くのだか書かないのだか…、みたいな終わり方をした。
そんな手前、続編を期待している読者がいるのでは?という自惚れた気持ちもあって、キーボードをカチャカチャ打ち始めたのがまさに今。
特に書きたいという意欲が湧いてきたわけでもない。
なので、読んでもそんなに面白くもない。


干し芋の商品開発を続ける中で、私は自分で市場調査をしてみたくなった。
市場調査部のY君が多品種のサツマイモを調達してきてくれたが、実際に商品として売っている干し芋にはどのようなものがあるのかの調査をしてみたくなったのだ。
「なったのだ」などと、えらそうな表現をしているが、干し芋を商品化して売り出したいなら、そこは最初に調査しておくのが当然であって、そんなことも把握しないまま商品開発なんて言っていること自体が、間抜けな行動だったのだ。

それみたことか!と、私を嘲笑うように純国産(大分産)の干し芋は普通に存在した。品種は紅はるかとある。
ドラッグストアで130gで398円。

しかし、この干し芋はやや水っぽく、甘みが弱く感じた。
私が開発中の干し芋と同じ国産ではあるが、味や食感は我が社の試作品の圧勝だと思った。自惚れやすい性格の私は、ここで大きな勝算を感じてしまう。

浮かれた気分で、また試作品の改善に熱中していた私は、市場調査部のY君が出先から持ち帰ったものを見て、体が硬直するほどの衝撃を受けた。
セブンイレブンのロゴが入ったそのパッケージの透明部分からは、棒状に並んだ干し芋が見えている。

私の反応を予め予想していたY君は、それを私に差し出したまま黙っている。
それを見つめたまま動かない私の目線が動くのを息を凝らして待っている。

「これ、セブンイレブンで普通に売ってるの?」
(セブンイレブンのロゴ入り商品が、マツモトキヨシで売っているわけないやろ!)

Y君は、黙って頷く。
私は、そんな当たり前のことを口にするのがやっとだった。
会議で提案のあった「スティック状の干し芋」というアイデアが唯一無二だと思い込んでいた私の中では、先を越された無念さがジワジワと込み上げていた。
そして、なんと卑劣なことをするのだという憎悪まで感じていた。
(卑劣って…、誰が?)

そして現在、そのスティック状のセブイレ干し芋はまだ怖くて味見できていない。
(美味しかったら、どうしよう⁈)
とりあえず、味見は商品開発部モルモットグループに依頼して、感想を聞くことにしよう。

形状に関しては、我が社のアイデアを先に商品化した大手コンビニがあったが、表面の質感から食感が違うことは想像がつく。
すでに市販されているものはどれもしっとり系で、私が目指すものはほっくり系だ。
現在、試作品は蒸して皮を剥きカットしたものを一度冷凍する、という工程を試している。
一旦、冷凍することで、表面が適度に乾燥し角に固い部分が形成される。

冷凍する時間を数パターン試すのと、皮を付けたまま同じ工程で作る実験がまだ終わっていないのだ。
軽率だがポジティブな私は、大手コンビニチェーンに勝負を挑まれても諦めてはいない。
(向こうは、お前なんか相手にもしていない!)

もし、すべての実験をして勝ち目がないと判断したら、むかごのスナック菓子製造にでも取り組もうかと、次の商品開発も計画中だ。

どうなるわたし、どうなる干し芋。

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