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第21話 カピちゃん、ロボ君と一緒に日向ぼっこをする。

その日から、ロボ君の家の庭はカピちゃんのお気に入りの場所になりました。毎朝カピちゃんは起きるとすぐロボ君の家の庭に行き、柳の木の下で日向ぼっこをして、家の精霊の柳さんに人間について色々な話を聞かせてもらい、夕方になったら隣の自分の家に帰りました。柳さんが教えてくれる人間たちの生活はカピバラの生活とは色々な面で違っていて、カピちゃんの興味をそそる話ばかりでした。そんな生活が何日か続きました。

「・・・ところで、人間たちも学校に行ったりするんでしょうか?」
いつものようにカピちゃんは柳の木の下で日向ぼっこをしながら、柳さんに話しかけました。

「そのようですね。私の知る限りでは、人間たちは皆幼い頃に学校に行くというきまりがあるようですよ。」
と、柳さんは言いました。

「そうすると、人間たちも学校で『人間としてどう生きるべきか』について学んでいるんですか?輪廻の森の学校は、たしかそういったことについて学んでいるってシルバーさんが言ってましたけど。」
と、カピちゃんは言いました。

「『人間としてどう生きるべきか』について、人間たちが学校で学んでいるかについてですか・・・私の知る限りでは、人間たちはそういったことを学んでいるわけではないようですね。柳田さんの子供たちは、数字を組み合わせた本や、歴史や他の生物に関する本は読んでいましたけど、『人間としてどう生きるべきか』については話していませんでしたから。」
と、柳さんは言いました。

「人間たちは『人間としてどう生きるべきか』について学ばないんですね。人間たちも学校でそれを学べばいいのに。そうすれば、わざわざ輪廻の森に学校を作って、動物たちに『人間としてどう生きるべきか』を学ばせるなんてしなくて済むのに。」
と、カピちゃんは言いました。

「たしかにそうですね・・・。」
と、柳さんが言いかけると、突然庭の端の方から大声が聞こえました。

「いつまで僕の家の庭にいる気なんだ!君の家は隣だろ?」
カピちゃんがその声の方向を見ると、怒った顔をしたロボ君が庭の端に立っていました。

「ああロボ君!・・・ごめんね・・・柳さんがここに居てもいいて言ってくれたんだよ。」
と、カピちゃんはおそるおそる言いました。

「僕は居てもいいなんて一言も言ってないよ。ここは僕の家で、そこは僕の庭だ。」
と、ロボ君は不満そうに言いました。

「ロボ君、お客様に向かってその失礼な言い方はなんですか!せっかくカピちゃんが遊びに来てくれたのに、ロボ君がおもてなしをしないから、私がおもてなしをしているんですよ。」
と、柳さんの怒った声が聞こえました。

「でも、僕の家の庭なんだよ。」
と、ロボ君は少し悲しそうに言いました。

「この家は私の家の庭でもあります。せっかく遊びに来てくれたカピちゃんに失礼なことを言ってはいけませんよ。もし庭を楽しみたいのなら、カピちゃんと一緒に楽しめばいいでしょう。」
と、柳さんは厳しい口調でロボ君に言いました。

「あの・・・もし良かったら・・・ロボ君も一緒にここで日向ぼっこをしませんか?凄く気持ちが良いですよ。オススメの場所です・・・。」
と、カピちゃんはビクビクしながらロボ君に言いました。

「自分の家の庭をオススメされてもね・・・まあ試してみてもいいけど。」
と、ロボ君は不満そうな顔をしながら柳の木の下まで歩いて来ると、カピちゃんの隣に座り込みました。

「ロボットは普通、日向ぼっこなんてしないんだよ。・・・まあこういうのも悪くはないけどさ。」
と、ロボ君は言いました。日向ぼっこが気持ち良かったのか、ロボ君の不満そうな表情は少し和らいでいるように見えました。

「ここは日向ぼっこに凄くいい場所だよね!あと・・・勝手にロボ君の家の庭に入っちゃってごめんね。ロボ君と色々話したかったんだけど、ロボ君は私と話したくないみたいだったから、庭で柳さんと話すことにしたんだ。」
と、カピちゃんはロボ君に言いました。

~第22話につづく~

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