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第20話 カピちゃん、柳さんと仲良くなる。

「いえいえ、そんなことはないと思いますよ。ロボ君は・・・今少し調子が悪くて・・・輪廻の森に来たばかりなので、他の子とお話しするのが少し恐いのでしょう。ロボ君もそのうち慣れてくると思いますから、どうかご安心下さい。」
と、柳さんは優しい声で言いました。

「そうですか・・・早く慣れてくれるといいですね・・・。」
と、カピちゃんは少し困ったように言いました。

「さあさあ、どうぞ中へお入り下さい。もし良かったら、私と色々な話をしましょう。ロボ君もそのうち参加してくれるかもしれませんから。」
と、柳さんは言いました。

「ありがとうございます。では、お邪魔します。」
と、言ってカピちゃんはロボ君の家の中に入りました。廊下を歩いて大き目の部屋に通されると、カピちゃんはフカフカの床に座り、柳さんと色々な話をしました。

柳さんは自分の昔の話もしてくれました。柳さんは昔は「柳田さん」という人間の家の精霊をしていたそうです。その家は大きくて立派な家だったのですが、古くなり過ぎて取り壊されることになり、柳さんが困っていたところ、シルバーさんから輪廻の森に来るようにお誘いを受けたそうです。

「柳さんは人間たちと一緒に暮らしていたんですね。人間と一緒に暮らすってどんな感じでしたか?動物園にも人間はいたんですけど、私は人間の言葉がわからないので、人間たちが何を考えていたのかよくわからなくて。時々ご飯をくれたり、家を掃除してくれる不思議な動物だなあとは思っていたんですけど。」
と、カピちゃんは言いました。

「人間と一緒に暮らすことは、私にとっては大変面白い経験でしたよ。もっとも、人間たちは私と一緒に暮らしているとは思っていなかったと思いますがね。私の姿は人間たちには見えないし、私の声も人間たちには聞こえませんから。私が一緒に暮らしていた『柳田さん』の家には、たくさんの人間たちが住んでいて、いつも賑やかでした。子供たちの成長を見守るのも好きでしたし、窓から見える庭も非常に美しかったですね。そうだ、この家の裏にもちょっとした庭があるんですよ。もし良かったら見てみますか?」
と、柳さんは言いました。

「庭があるんですね!ぜひ見てみたいです!」
と、カピちゃんは言いました。そして、柳さんの案内に従って玄関を出て、家の裏の方に回ると、そこには様々な種類の花と木が生い茂った、素敵な庭がありました。

「わあ!綺麗!」
と、カピちゃんは感動で大きな声を上げました。

「良い庭でしょう。シルバーさんに頼んで、少しづつ植える植物を増やしているんですよ。ちなみに、右側にある葉の垂れ下がった大きな木が『柳』の木です。私の大好きな木の1つで、この輪廻の森での私の名前としても使わせてもらっているんです。私が以前一緒に住んでいた『柳田さん』の名前にも使われている木でしてね。この木の下で日向ぼっこをすると、とっても気持ちが良いんですよ。」
と、柳さんが言いました。

「日向ぼっこ大好きです!さっそくやってみますね!」
とカピちゃんは言い、急いで柳の木の下に寝ころびました。柳の木の下はフカフカの草で覆われ、上を見上げるとゆらゆら揺れる柳の葉の間から日光がチラチラと差し込んでいました。

「本当に気持ちが良い庭ですね。ずっとここにいたいくらいです。」
と、カピちゃんは言いました。すると、柳さんは少し笑って言いました。

「好きなだけここにいるといいですよ。ロボ君にも以前この庭をオススメしたんですが、ロボ君はあまり庭には興味がないみたいで・・・。色々工夫して誰かに見せたいくらい素敵な庭になりましたので、カピちゃんがこの庭を気に入ってくれて私も嬉しいですよ。」

「凄く気に入りました。本当に素敵な庭ですね。特にこの木の下での日向ぼっこは最高です!ところで、あの植物はなんて名前なんですか?」
と、カピちゃんは聞きました。柳さんが以前住んでいた『柳田さん』の家の庭にもたくさんの植物が植えてあったようで、柳さんは植物に大変詳しく、『柳田さん』の家での思い出話と一緒に、カピちゃんに庭に植えてある様々な植物の説明をしてくれました。

そして、その様子を家の窓のカーテンの隙間から、ロボ君はじっと見つめていました。

~第21話につづく~



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