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コンプレックスを解消するために大学院に行ってもいい!~英語コンプレックス編~(前編)

INSEADのExecutive Master in Change(通称、EMC)は、 “Together, we transform”をテーマに、「個人、家族、組織、社会」といったあらゆるシステムレベルで起こる“Change”について、組織論と心理学を用いた組織心理学の観点から、ビジネスプロフェッショナルに新しい視座を提供するプログラムです。

EMCは、2023年現在、フランスのフォンテンブロー(ヨーロッパキャンパス)と、シンガポール(アジアキャンパス)の2カ所でそれぞれ教えられています。私が学んだのは、シンガポールのアジアキャンパスです。

これまでの記事では、EMCにはどのようなビジネスプロフェッショナルが学びに来ているのか精神科医のクラスメイトグローバルトップ企業エグゼクティブのクラスメイト、2人の実例を挙げてご紹介すると共に、「自分探しのために大学院に行ってもOK!」というお話をしました。

今回は、「自分のコンプレックスを解消しに大学院にいくのもOK!」というお話をしたいと思います。

私の場合、長年のコンプレックスは、①英語、②自分に自信がない、の2つでした。

まず、①の英語について。(多分、「INSEADのEMCにはどれくらいの英語力が必要か?」という質問がある気がするのですが、それについては別途書くことにしますね。)

私は帰国子女でもないですし、地方の片田舎の、両親共が地方公務員という家庭で育ちましたので、英語は自力で学んで身につけたものです。

小学生の頃から、「英語を話せるようになりたい!」と思い、英語教室に通わせてもらったり、ラジオ英語を毎日聞いたり、海外の映画は、英語の副音声で聞くようにして、自力の努力はする子どもでした。

高校3年生のとき、1年間、アメリカのアイオワ州に交換留学に行かせてもらったのですが、「日本人はおろか、アジア自分は私ひとり」という環境のおかげで、リスニング力と、英語の会話のリズム、のようなものはその時に身についたと思うのですが、話すということについては全く満足にできませんでした。

「I have to do this! I must do this!」など、中学生の時に習った構文を使って話していたら、ホストマザーに、「世の中に“have to”なんてものはそんなにないのよ、その言い方気をつけなさい。」と言われたことを今でも覚えています。「〇〇しなければならない」って、すごく強い表現なんですね。いつも、「これをしなきゃいけない。あれをやらなきゃいけない」とばかり言っている、アジア人の女の子が、ホストマザーにとっては、すごく奇妙に映ったのでしょう。もしくは、そんなに根詰めて生きるのはやめたら?という人生のアドバイスだったのかもしれませんが…。

その後、アメリカの大学に進学しましたが、それでも、自分の英語に満足することはありませんでした。アメリカの大学を卒業できたのですから、それなりに英語はできたと言えるのだと思いますが、自分では英語コンプレックスを抱えたままの状態でした。生活はできても、日本語と同じレベルで、自分の気持ちまで英語で話すことはできなかったからです。

今思えばですが、このように、当時の私は「自分が思っていることを、自由自在に英語で表現することができない」ということを、「自分の英語はダメだ」という解釈にしてしまったところがあったと思います。生活できるからOK、大学を卒業できたからOK、なのではなく、果たして自分の気持ちを伝えられているのか、その“コミュニケーション”の観点から、自分の英語力に納得できていなかったのだと思います。

大学卒業後は、日本に戻って東京で社会人になりました。海外大学卒ということで周りからは、「英語OKな人材」として見られていたとは思いますが、自分としては、ビジネスの場で使い物になるレベルなのかはいつもビクビクしていました。とはいえ、ずっと英語人材として扱われていたので、きっとそれなりにはできていたのでしょう。

それでも、英語コンプレックスは拭えませんでした。心のどこかに引っかかったまま、10代、20代、30代を過ごし、40代目前のところまできていました。11歳くらいから英語に憧れ続けて、もうかれこれ30年近く、英語に振り回され、憧れとコンプレックスを抱えて生きてきたんですね。

INSEADに合格したとき、私は39歳。「このチャンスを活かして、今度こそ、英語コンプレックスを解消しよう」と強く思いました。ずっと、英語コンプレックスを持ちながら生きる自分に心底うんざりしていたのと、そんな状態で残りの人生を生きていくのでは、自分の人生に後悔が残ると思ったからです。もうこれからの人生は、英語コンプレックスなんかなく生きていきたい、その時は強く思いました。


英語はそこそこ大丈夫なはずなのに、英語コンプレックスがあるという方、もしかしたら、それって、英語で自分を出せていないからそう思うのではないでしょうか?

自分のありのままの気持ちを英語で伝えて、それが受け入れられて、相手の言葉が返ってきて、それに対して共感できたりできなかったり。お腹の底から笑い合ったり。それって違うよなと思った違和感を伝えたら、相手も同じ違和感を持っていたことが判って嬉しかったり。

そういう母国語であれば簡単にできて、楽しいコミュニケーションの真髄のようなものを、英語で味わう機会がなかなかないことが、英語コンプレックスを生み、ひいては自尊心を傷つけることになっているのではないかと思うんです。

ご自身の英語コンプレックスが、どんなところに由来しているものなのか、少し考えてみられるのもよいかもしれません。
 
そして私のように、英語のコンプレックスが、もし、自分のことを伝えきれていないから、ということに由来するものだとしたら、それを解消できるような環境を選ぶのも一つの方法だと思います。
 

その点で、私にとって、INSEAD・EMCは格好の場だったということを一例としてご紹介したいと思いました。EMCに行けば必ず英語が上達するというわけではありませんし、EMCは英語のコンプレックスを解消しに行くところでもありませんが、EMCは、自分の気持ちをシェアしないことには成り立たない構成になっていますし、それを受け止められる人材が選ばれてきています。

その実例となるような話で、英語のコンプレックス解消のために、INSEAD・EMC時代の2年間の大学院生活中に私が取り組んだことで、効果があったと思うことの1つが、

①クラスメイトと1対1のゴハンに行ったこと

です。

既にMBAに行っていた後輩に、MBA留学中何が一番役に立ったかアドバイスを求めたところ、「1対1のゴハンに誘うこと。最近は和食ブームだから、日本食に連れて行ってあげるとすごく喜ばれますよ」と教えてくれました。早速それを実行し、クラスメイト一人一人を日本食レストランに誘うということを始めました。まだ授業が始まって間もない頃だったので、来てくれるかな、と不安になったのですが、誘った人は皆喜んでくれて、すぐに日程調整をしてくれました。直前に予定をドタキャンされることもなく、当日は時間通りに表れ、なんなら、私よりも先に到着して私を待ってくれるクラスメイトも何人かいました。そして、気づいたら一緒に4時間も5時間も話していたのです。一つ目のお店の閉店時間が迫り、二つ目のお店に移動したこともありました。「あの子と、そんなに話すことあるかな…」と思っても毎回毎回、長時間ずっと話し込むような状況でした。お互いに、自分の話もするし、相手の話も聴きました。

「あれ?」と思いました。

「あれ?私との時間楽しんでくれている?」「あれ?私、もしかして、結構深い話をしている?」「あれ?もしかして喜んでくれている?」というように。しかも、それが1人だけではなく、毎回毎回そうだったのです。10人近いクラスメイトとそのような時間を過ごし、私はようやくリアリティチェックができました。「私の英語は完璧ではないけれど、私は、最近出逢ったばかりの人と、これだけの深い話をして、相手にとっても、4、5時間も同じ時間を過ごしたいと思ってもらえる人なんだ、私。」と自分で思えるようになったのです。

自分の深いところの本音を話して、それが相手に伝わったと実感でき、私は最近出逢ったばかりの人と、これだけ自分にとってクオリティの高い満たされた時間を過ごすことができた、そのような実感が続いたおかげで、私の英語コンプレックスはだんだんと薄まっていきました。

そして、これは、多分、EMC特有なことであって、EMCに集まる人たちが、心ある人たちだからなのかもしれません。選考過程のなかで自分の気持ちをオープンに話せるかどうかは見られているようだったので、この見立てはあながち間違ってはいないと思うのですが、その意味で、EMCというスクリーニングがかかったクラスメイトのおかげで、私は自分の英語コンプレックスを解消することができました。

もし、あなたの英語コンプレックスが、自分の気持ちをシェアできていないことに由来するものだとしたら、INSEAD・EMCは格好の場だと思いますよ。

そのような形で、私はINSEAD・EMCを、自分の英語コンプレックスを解消する場所としても使いました。後編では、その取り組みの続きをお届けします。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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