見出し画像

空き家になっている実家。誰もが売却したいわけじゃない

実家が空き家になっているという人が多くなりましたね。

住んでいようがいなかろうが、家の管理は所有者の責任。
空き家を管理しないで放置すると、いろいろな問題が出てきます。例えば建物の老朽化で建築部材が落下したり飛散したり。樹木が生い茂り不用心になったり・・・。樹木が隣近所に覆いかぶさったり、家が傷んで窓が割れたり壁に穴が開いたりして、アライグマやハクビシンなどの野生動物が巣を作り、周辺に迷惑をかけることもあります。
家の管理不全が原因で被害が出た場合は、損害賠償責任を負う可能性だってあります。
実家が空き家になって、さてどうしよう?となる人が増えていくのは、言わば当然のことです。

2015年5月に完全施行された「空き家対策特別措置法」では、危険とされる「特定空き家」に指定されると税金特例を受けられなくなるばかりか、罰金が科せられる可能性も出てきました。でもこれは、管理されていない空き家の話です。

そこで空き家をどうするか?なんですが、処分=解体するか、賃貸物件に作り変えるなどの活用、もしくは売却、というのが一般的。
だから世間では、どうやって処分するか、どうやって高く売るかという話題にとかく注目されがちです。
でも、誰もが処分したい、高く売りたいと思っているわけではないんですよね・・・。
それに、自宅を処分するというのは、そう簡単なことではありませんよね。
いざ処分しようにも、片づけなくては処分できないので、重い腰が上がらないという声もよく聞きます。
場所によって、土地や建物の状況によって、売却しやすいもの、しにくいものもあります。

自分が住む家はある。
今、自分が暮らすには立地がよくない、間取りが適切ではない。
だけど、その家を処分する気にはなれない。

そんな人は意外に少なくないのではないでしょうか。

先日ご相談を受けたのは、田舎に自分が生まれ育った実家があるけど空き家になっている、という方でした。
終活に取り組んでいらっしゃる方で、すでにご両親は亡くなっています。
ごきょうだいは3人。ご両親が亡くなったとき、家をどうするか話し合ったそうです。
処分する、売る、誰かが移り住む、いろいろ考えたそうですが、生まれ育った家には思い出が詰まっており、処分する気にはなれなかったそうです。
きょうだいは皆、若い頃に都会に出てそれぞれ家庭を持ちました。
誰もが今の暮らし、友達関係などを手放す気にはなれず、移り住むことなど現実的ではありませんでしたが、話し合った結果、ごきょうだいの共有名義で相続することにしたそうです。

ご相談された方は現在60代後半。
「もう住む人もいないんだから、さっさと片づけて処分すればいいと周りから言われるけれど、売るなんて考えられない」
「いろんな思いが残っているこの家を、どうかこのまま、誰かが使ってくれないだろうか。できれば時々様子を見に行かせてほしいのだけど・・・」と、お話しされました。

私の周りでは、親亡きあとの空き家になった実家をそのままにした状態で人に貸している(住んでもらっている)人がいます。
一般の賃貸物件とは契約も使い方も異なるので、いろいろ難しいこともあろうかとは思いますが、運用次第では一つの解決策とは思います。

相談者の話に戻りましょう。
お話を聞いているうちに出てきたのが、
この建物が地域の役に立てばいいなと思っているんです
ということでした。
これから地域の役に立つように自分たちでこの家を使って何かしようとした場合、体力的にも能力的にも、たぶん頑張っても10年、15年。
移住するわけでもなく、どこまで何ができるだろう?
きょうだいそれぞれ子どもがいるけれど、もし途中できょうだいの誰かが死んだら、その子どもたちに大きな荷物を背負わせることになってしまうのが気がかりだ。できれば相続など考えなくてもいいようにしたい。
何か良い方法は無いだろうか。
ということでした。
相談者の方は、地域活動、社会貢献にも関心が高く、体力的にお手伝いが無理になったとしても、どのように地域の皆さんに役に立っているかを眺めていることができたら幸せだと話されました。

この方にとって大事なことは、空き家を処分や売却するのではなく、残して活用したい(してほしい)、ということ。しかも「資産」として残したいわけではない、ということです。
これからの時代、こういうニーズが増えてくるように思います。
自分たちが使うわけではないけれど、そのまま残したい、どなたかの役に立つのであれば使っていただきたい、という気持ち。

「でも地方自治体はお財布事情が厳しくて無理なんです」
不動産販売じゃない形と言うと、地方自治体に買い取ってもらうしか思いつかなくてそういう話になるのでしょう。
でもどうでしょうか。

最近は、若い人たちの中にも社会起業家を志す方が増えています。
フリースクール、母子家庭や障がい者や高齢者支援など、社会貢献を志す非営利団体や一般社団法人なども多数あります。
どこもお財布事情が厳しいでしょうが、「場」を探しているところは少なくありません。
そこで、賃貸に出すのではなく、「使って」もらうことはできないでしょうか。
使い方については話し合いになろうかと思いますが、いずれその法人に「寄付」する形で、という道筋は作れないでしょうか。
そうすればごきょうだいの子どもたちの負担になることもありません。

買い取ることはできない地方自治体も、そういう「場」がほしい団体等法人を紹介してはくれないでしょうか。
お話を聞きながら、そんなことが叶うとよいのに…と思いました。
市場経済の論理では、不動産は「売買」か「賃貸」ですが、市場が縮小している今の時代だからこそ、それだけではない新しい形を探せたらいいですね。

(写真はイメージです)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?