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「攻めの採用」という言葉の勘違い

なぜダイレクトリクルーティングが上手くいかないのか?

「ダイレクトリクルーティング」という言葉が日本で定着してから久しいですが、言葉こそ定着していて認知度も高まっている反面、採用手法として定着しているとは言えないのが現状です。
 
ダイレクトリクルーティングとは、従来の「求人媒体に掲載/人材紹介会社に依頼してあとは祈って待つのみ」という採用スタンスとは「真逆」の採用手法です。

「待ちの採用」では、転職意欲があり、かつ自社に興味を持ってくれている、というごくわずかな母集団から採用を決めに行く必要があるのでレッドオーシャンになりがちですが、ダイレクトリクルーティングを上手く使いこなせれば、転職意欲がなく、かつ自社に興味のない層にまでターゲットが広がるため、優秀な人材を採用できる確率が上がります。
 
しかし、これまでは「日本企業における採用」イコール「待ちの採用」でした。

なぜなら、リクルートをはじめとする採用支援サービス及び雇用インフラとしてのハローワークがあまりにも強固だったため、「人を連れてくるのは人材会社の役割」「来た人を選考・ジャッジするのが人事の役割」という形での分業モデルが成立し、人事採用担当の役割がオペレーションに最適化され過ぎてしまっているのです。
 
「待ちの採用」を前提にした採用体制のまま、ダイレクトリクルーティングを導入すると、あらゆる選考プロセスにおいて「ズレ」が発生します。

初手を間違えると、決定的なズレに発展する

「ダイレクトリクルーティング」といえば、ほとんどの場合は「転職潜在層も含めた求職者」が登録しているデータベースに対してアプローチをかける「データベースリクルーティング」を指すケースが多いですが、そのはじめの一歩は「スカウトメール」という名のラブレターからはじまることが一般的です。
 
ただ、「待ちの採用」に最適化された人事部では、ラブレターを書くノウハウがないことも少なくありません。
求人広告のように「弊社の事業内容は~」「裁量が大きくやりがいのある会社です」とひたすら「俺のスペック」をつらつら書き綴るだけ。

「あなたのどこが素敵だと思ったのか」という話は全く書かれておらず、せいぜい「あなたのIT業界での経験を拝見して~」など「スペック」の情報が書いてある程度の「ラブレター」がほとんどです。
 
「もともと気になっていた企業」ならいざ知らず、見ず知らずの企業からそんな「押し付けがましいラブレター」を受け取って、心が動く人はいないです。

ラブレターを送って奇跡的に返信があったら日程を調整して、いよいよ初デート!というのが「初回面談」の位置付けです。

本来的には「あなたに興味があります。だから一度お会いしませんか?」
 
そんなラブレターを送っているにも関わらず、いざ「初デート」の場に臨んでみたら、面接官が開口一番「自己紹介をお願いします」といきなり違和感のあるトークから始まり、ついには「転職理由は?志望動機は?」など質問責め、みたいなケースは枚挙にいとまがありません。
初デートがこんな状況では「2回目のデート」なぞ望むべくもないことは、いうまでもありません。

攻めのスタンスに変えると成功する!?

「待ちの採用スタンス」がダイレクトリクルーティングで通用するのは、放っておいても応募が殺到するようなイケメン企業だけです。「ただしイケメンに限る」ですね。
 
余談ですが、本当のイケメン企業に限っては、非常に上手にダイレクトリクルーティングをやっていて、おもてなしの心で求職者をお迎えし、上手に口説いています。生身の人間も企業も同じですね。
 
それでは、どうすればダイレクトリクルーティングが上手くいくのでしょうか。
ダイレクトリクルーティングが上手くいくための唯一絶対の条件が「攻めの採用スタンス」に切り替えるということです。「攻め」というのは、口説くこと=「動機付け」に徹するということに他なりません。

興味があることから相互理解へ

スカウトメールにおいては、まずは「初デートの約束を取り付けること」をゴールに「あなたのどんなところが好きなのか?なぜ会いたいのか?会って何を話したいのか?」をきちんと伝えます。

それもできるだけ「経験やスキル」という「見た目」の話ではなく、できるだけその方のストーリーに根ざした「中身」の話を中心にしましょう。
 
例えば、大手企業からベンチャー企業に転職をされている経歴の方なら、「大手企業からベンチャーに転職するというのは、とても勇気がいることですよね。

実は私も、大手企業からの転職組でした。

「決断に至った背景を、ぜひ直接聞かせて下さい。」など、レジュメには書かれていないことまで読み取りながら「ちゃんとあなたのことを、見てますよ。

だからもっと、あなたのことを詳しく知りたいです。」というように、気持ちを伝えるのです。

ラブレターの想いが実り、取り付けた「初デート」でいきなり「俺のどんなところが好き?」と聞く人はいませんよね。

「初デート」は面接ではなく必ず面談にすること、その上で「見極め」ではなく、「相互理解」をゴールにおくべきです。
 
そのため、「あなたのことを教えて下さい」だけではなく、自社について、あるいは面談担当者自身について、相手がどんなことを知りたがっているか?を常に意識しながらプレゼンテーションすることが必要となります。
その場でお互い「もっと詳しく知りたい!」という気持ちになれば、初デートは成功。

いよいよ選考フェーズに駒を進めることができるのです。
 
ダイレクトリクルーティングは本来、「待ちの採用」では採用できない優秀な方を採用できる優れた採用手法です。

もし、ダイレクトリクルーティングが上手くいっていないとすると、それは従来の「待ちの採用スタイル」のままスカウトメールや初回面談を行ってしまっているからかもしれません。
 
「攻めの採用スタンス」に切り替えてダイレクトリクルーティングに取り組んでみると、また違った結果が得られるはずです。

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