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のにねぇ

渋谷HMV&BOOKS TOKYOで見つけた、「三の隣は五号室」のサイン本を迷わずに購入。久しぶりに文学を 一気読み、 楽しかったなぁ。

部屋が主人公というか、定点観測小説とでも呼べばいいのか。長嶋有史上でも特にテクニカルな小説であろう1冊。登場人物たちのネーミング、家電製品や家の中のガジェットの変化、その移り変わり、確かにあったであろう受け取り方の変節。そういった所で、時の流れや時代の移ろいを見事に描いていて、いやでも言うほど大袈裟ではなく、サラリといかにもブルボン小林ぽく小ネタを散りばめながらなのであって嬉しくなっちゃう。自分も賃貸物件居住者だけども、前に住んでいた人を知らないし、次に住む人の事もきっと知らずにいるのって良く良く考えてみたら変な気がする。小説の中では、登場人物たちが緩やかに繋がっているように見えるのだけれど、実際には交わらない。でも、同じ部屋に住んでいるのだから似たようなことを考えたりする事もあるだろうなぁと妙に納得。僕の前の住人も、このスペースをどうしようか悩んだのだろうかとかね。

長嶋有は「なにも起こらない」間に大きな決断をしたり、大きな人生のうねりに飲み込まれたり、何というか「ドラマチックな展開の真っ只中」でも何も思っていない時があるという事を小説で描いていて、なにも起きていない時間やなにも思っていない時間も「生きている時間」だと思えて何だか良いのですよ。 そんな長嶋さんも15周年だそう、みんなで読もうじゃないか!そして「本」の「文学」の話をしようじゃないか。オススメです!

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