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ため息111: 休む≒動かず

学生時代、ケルンパ系の学生運動に参加していた先輩の一言を、今でも折に触れて思い出します。

「疲れたら休めばいい」

当時、この一言は日和見主義ではないかと反発しました。何よりも、ヒヨル(現場で逡巡して逃げること)ことを嫌うセクト出身者が口にする言葉ではないと思いました。
長く勤め人を経験してはじめて、先輩のこの一言の有用性を理解できるようになりました。年齢差は数年なのですが、とても超えられないほどの格差を感じました。

「休む」と「動かず」の戦術はだいたい同じです。疲れたり、問題解決に行き詰ったり、どうしてもこれ以上前進できないときに「休み」ます。一旦休んで、気力を回復させて再挑戦します。

孫子は、兵法「五道あり」で、前・後・右・左・動かずという5つの兵法を説いています。情報不足では十分な戦況分析ができず、十分な分析ができなければ勝率は不透明になりますので、動かないという最高の戦術をとるといいます。
宮本武蔵は生涯無敗であったと伝えられています。無敗の理由は簡単で、勝てる相手とだけ戦ったからだといいます。勝てる自信がないとき、勝つ方法が不明確のときは、逃げる、戦わない、すなわち戦いを「休み」ます。

勝てない相手を前にして、いかに負けるかが次につながると考え、壁の厚い所に突撃して玉砕する戦術は、負け組みの美学です。ケルンパの先輩は、孫子と宮本武蔵の兵法を学生時代に、機動隊の厚い壁にぶつかりながら学んだに違いありません。

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