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ウサギになった殺し屋

第一話

殺し屋・アルバート・シュワルツコフ

平日の昼間、シュワルツコフはペットショップにいた。仕事を片付けた後は、必ずといっていいほど立ち寄っていく。癒やしを求めて
大の動物好きで、普段は裏社会に生きる殺し屋、休みの日はペットショップを
回るのが趣味の寂しい人間でもある。悲しいが
家から歩いて10分、緑溢れる場所にペットショップがある、今日もそこで約30分ウロウロしながらも
ケースにいる動物をジッと見ていた。
犬・猫・ハムスターなど、いろいろな動物を
見るが、決してペットを買おうとはしない。 
寂しい理由でペットを飼ったりするやつは馬鹿だと
思っている。シュワルツコフはそんな無責任な
ことはしない。見てるだけで十分なのである。

「どの子もかわいいなぁ。ん?」あるケースの
場所で足が止まる。そこのエリアにはウサギがいる
しかも、見たことがないぐらい。でかかった。
気になり、近くにいた店員に聞く。
アルバート「すみません。ちょっといいですか?」「はい、はい、どうしました?」
細身の長身の若い男の店員が近づいてくると、
「この動物珍しいですね。ウサギですか?」とシュワルツコフは店員に話しかける。

指をさす方向にはウサギがいた、大きな円の柵に 
大きなウサギ2匹がムシャムシャと葉物を食べていた。
「あぁ、この子は、フレミッシュジャイアント・ラビット。世界最大のうさぎで。店の目玉商品ですね。」事務所から、店長らしき人がやってる。
「お客様、今日はどのような御用で、」シュワルツコフはウサギを見ていると、店長はセールストークをしだす「なるほど、なるほど、」
適当に相槌をしていると、ピタッと話が止まり
「あの、お客様は知ってますか?」トーンを1段階低くして話す、「なにがですか?」店長の方に身体を向ける。
「最近、ペットショップや動物園で、動物が盗まれる事件を」「その話は本当ですか?知らなかったです。」店員から、その話を詳しく聞くと、腸が煮えくり返る思いになった。動物を誰よりも愛するシュワルツコフは、両手の拳がブルブルと震えていた。
顔を必死に笑顔に保ちながら、話を聞き終わると、手の力を弱める。

「ここは被害はまだ大丈夫ですか?」「まだ、うちの店は大丈夫です。私の友達がやってるペットショップは、店にいたペット全て盗まれたみたいですが。」
「すみません、変な話を聞いて。」「いいえ、別にいいですよ、もしお客様が動物を飼っていらっしゃるなら、お気をつけください。」
店長は悲しい顔を一瞬して、事務所に戻っていく。
店長の背中を見て、柵の中にいるウサギを撫でると

「すみません、少し考えさせてください。」
「わかりました。」そう言うとペットショップの店員は、他の客への接客に行ってしまう、シュワルツコフはペットショップの外に出ると、歩きながら携帯電話をする。「もしもし、俺だ。ちょっといいか?」「どうした。こんな時間に電話してきて珍しいなぁ。」

電話に出たのは情報屋のカヤ、シュワルツコフの長年の腐れ縁で、裏社会の情報に詳しい男、
金にはがめついのが欠点だが、
「大至急、調べてほしいことがある。」
「何かあったのか?」カヤはシュワルツコフに
優しい声で聞いてくる。
「まぁな、」シュワルツコフはカヤに動物が盗まれてる事件を説明すると、カヤは笑った。
「おいおいまさか、シュワルツコフ、その組織に乗り込んで潰す気かぁ。」電話越しから笑い声がはっきり聞こえてくる。いつものシュワルツコフの動物愛が爆発する。人殺しの稼業をしながら、動物愛護団体を運営している。人間よりも動物が好きなシュワルツコフは、イライラを隠せなかった。
「当たり前だろ、金は多めに出すから、早めに頼む。」「わかった、明日一時にいつもの喫茶店で、それじゃあ。」

携帯電話を切るカヤ、ポケットに携帯電話を入れると無言で道を歩く、交差点を渡り緑溢れる道を歩いていると、大きな屋敷が現れる。
大きな扉の前に立つとゆっくり開き、中へ入っていく。様々な花が咲いている庭を通り過ぎ、玄関のブザーを押す、ガチャと音がすると「お帰りなさい、随分遅かったですね。」「あぁ、ちょっといろいろと、」玄関で靴を脱ぎ揃えると廊下を歩く、
リビングに到着すると、ソファにダイブ、
シュワルツコフの助手・マリソンはノートパソコンをテーブルに持ってくるとテーブルに置く。「アルバート、ほらノートパソコン、」ソファから起きるとノートパソコンを開く「ありがとう、今日、カヤに情報を集めてくれって言ってきた。」マリソンの顔つきが変わる。「え?一体何があったの?」マリソンに
ペットショップで聞いた事を話すと、マリソンは自分のことの様に怒る。マリソンもシュワルツコフと同じ、いやそれ以上に動物が好きだった。だからこそ、怒りを感じていた。

マリソンはアルバートに詰め寄る。「アルバートはもちろん。犯人を探しますよね。もちろん組織を壊滅させますよね?アルバートがしないなら、この私が。」「いやいや、ちょっと待てマリソン、先走るなよ、ほら座って。」
アルバートはマリソンの腕を抑える。フリフリのスカートにブロンドの長い髪とキリッしたアーモンドアイの目、お人形の様な見た目をしたマリソンは数年前は特殊部隊に所属していた元エリート、階級は軍曹で男達とわたりあえるほどの体力・頭脳・格闘技を持ち合わせたスーパーウーマンのマリソンが、単身、犯罪組織に乗り込み殲滅、それが1つだけじゃなく、数十、いや数百はあったかな?
だからこそ、先走らせない様にマリソンを止める。
「ごめんなさい、ちょっと感情的になってしまって。」シュワルツコフの隣に座る、シュワルツコフも
ソファに座ると「いいよ。俺も怒ったから、人のこと言えないし。」カタカタとリズミカルにキーボードを打ちながら、動物失踪の記事をいくつか確認、

険しい顔で画面を睨みながら記事を読み続けていると動物実験の四文字で止まる。動物が解剖された写真や動物を殺処分する記事に目を塞ぎたくなる。  
他の記事に目を通している途中に、ある記事が目に止まる。
半年前、朝の住宅街のゴミ捨て場に、男性の惨殺死体が発見される。遺体を調べると、惨殺された男性は人間に殺されたのではなく、肉食獣に襲われたと
その記事が瞬く間に広がり、住宅街に住む住民達は
大パニック、警察は住宅街をパトロールし、今現在あの事件は起きてないらしい。
記事を見ていると「ねえ、何見てるの?」
パソコンを覗くマリソン、口に手を添えて驚いた顔で、「この事件、私知ってる。まさかシュワルツコフ?」
両手を頭の後ろに組み、ソファに倒れる。
「あぁ、動物の誘拐に関係してるだろうなぁ。あくまで勘だけど。」「ビール飲む?」「あぁ、もらうよ」
マリソンが持ってきたビール缶をもらうと、口を開けて、そのまま一口飲む。苦みが喉を通り過ぎる。
テーブルにビール缶を置くと、ビール缶を持ったマリソンが「ねえ、明日私も一緒について行っていいですか?」と言うと、ノールックで「あぁ、わかった。」マリソンは立ち上がると、口を開けてないビール缶を冷蔵庫に戻しに行く。「私もう寝るから、夜更かししないでね、あとビールは」「一本まで、わかったよ。」「わかれば良し。」そう言うと、マリソンはベッドルームへと消えていく。ベッドルームからパソコンに顔を戻すと、シュワルツコフはビールを飲みながら遅くまで情報収集していると、デジタル時計はちょうど12時を指していた。

窓際の席で、シュワルツコフ・マリソン・カヤが
雑談、頼んだコーヒーとサンドイッチを食べながら話す、カヤだけは水が置かれていた。
カヤはシュワルツコフに催促すると、金が入った袋を渡す。

分厚い袋を見てニヤニヤニヤ、分厚い袋をバックにいれると、茶色い紙の袋を提出してくる。
「例の案件だが結構大変だったぜ、あとさぁ、お前ホントに、この組織に喧嘩売るつもりか?」
いつものふざけた口調で話すカヤはいない、長年の腐れ縁だからわかる。今回はかなりヤバイミッションだと、「ねえ、さっきから聞いてるけど、」「なんですか?」コップの水を一気に飲み干し、テーブルにコップを置く。「そのヤバイ組織ってなんなの?」
「ratって言う組織だよ。」「rat…」コーヒーカップを持つ手が一瞬止まり、テーブルに戻す。
「そのratってどんな組織なんだ。詳しく教えてくれ。」腕を組み、深く息を吸って吐く。「ratって組織は謎に包まれていて、詳しいことは分からない、ただ1つだけ分かっていることは、やつらは動物を使って新しい人間をつくろうとしてる。」マリソンとシュワルツコフは驚いた顔をする。「そんな、嘘だろ。」
「ねえ、いくらなんでもその話は嘘でしょ?」
数秒間の沈黙が流れ、カヤは「嘘ではない、実際に組織に潜入した奴から聞いたから間違いはない、」
コ手つかずのサンドイッチをムシャムシャと食べ、コーヒーで胃に流し込む。「そうかわかった。その組織の場所を教えてくれ。」「わかった。パソコンに場所を送っておく。それよりホントに行くのか?」声のトーンを低くして話すと、テーブルを両手で強く叩くと周りにいた客の視線が集まる。
シュワルツコフは椅子から立ち上がると、すみませんと頭を下げ、椅子に座る。
「私も行きます、先生だけじゃ不安なので、いいですよね?」「あぁ、わかった。どうせ断っても勝手について来るだろ。」「じゃあ、そろそろ俺は行くから。頑張れよ。」レシートを持っていき、会計を済ませ、喫茶店を出ていく。残ったシュワルツコフとマリソンは、組織への潜入をどうするか話し合っていた。

四日後、まだ太陽が出てない朝5時頃、シュワルツコフとマリソンと荷物を載せたJeepは、高速道路に乗ると山奥へと向かう。デコボコの道をひたすら走り続けること6時間後、とある辺境の地に辿り着く、車を降りると迷彩色の布を被せ、トランクから荷物を出し、背中に背負い歩きだすこと一時間。小高い丘に到着すると、背中の荷物を降ろして中身を出すと、キャンプの骨組みを組み立てる、慣れた手つきで10分で完成すると、シュワルツコフは愛用の双眼鏡で覗き込むこと数秒で、お目当ての基地が見つかる。ズームすると基地に数台のトラックが検問を通過して基地の中へと入っていく。
双眼鏡から目を離すと、溜め息が出る。あのトラックに動物がいるのだと思うと、すぐにでも助けに行きたい衝動に駆られるがそれを抑える、

マリソンがコーヒーのカップを差し出す。黙ってカップを受け取り、ゆっくりと飲む。「どう、何か分かった。」双眼鏡をマリソンに渡すと、食い入るに見ていた。「あれが、ratの拠点、かなりデカイわね。」
「さてと、どうしますかね。」頭を軽く掻きながら、思考していると、「私にいい作戦があるの」そう言うとマリソンはJeepのトランクから、作業着と顔のマスクを2人分取り出す。「なんだ、これは。」「あの組織に潜入するための作業着とIDカード、それと変装するためのシリコンフェイスマスク。」いつの間に用意していたんだとシュワルツコフは関心する。「これ用意する金はどうした?」「私が用意しました。カヤに電話して、お金出すから用意してねって。」いつもながら全部任せてすまないと、心から謝った。
「それじゃあ明日の朝に決行するってことで。今日はここで野宿だなぁ。」「ねえ、お風呂はどうするの?」「風呂?入らないよ、1日ぐらい平気だろ。」
顔がひきつるマリソンは黙って、ジープに乗り行ってしまう。ココに来る前に小さなモーテルがあったから、そこに泊まるのだろうと、ジープを見送ると、
リュックサックに入れたノートパソコンを取り出すと電源を入れ、情報収集を始める。すぐに寝ようともしたが寝れなかったからだ。腕時計は夜の8時になろうとしていた。

施設は慌ただしく研究員が働いてた。
実験台になる動物達が次々と運ばれてくる
特別な実験施設に運ばれると、数人の研究員が
一匹ずつ、緑色の液体が入った注射器を打っていく。打たれた犬や猫は、のたうちまわって死んだり、研究員に噛みついて研究員が死亡したりと、
研究は難航していた。彼らratの目的は、動物を人間と同じ、いや人間以上に進化させ、この世界を支配するのが目的、たが、その目的が今座礁しかけていた。研究員達は焦り始めていたが、それ以上に実験の運営を任されている。リーダーのアレックス・バーンはイライラを隠せずにいた。別の一室のモニターから実験を監視していたが、モニター越しから
研究員たちに指示をするアレックス、「研究長、大変です。」モニター室に息を切らして入ってきた研究員
「どうした。何かあったのか?」息を整える研究員
数秒間、間を置いてから話し出す。「さっき注射を施したウサギが、ウサギが暴れ出しました。」ウ、ウサギだと、頭が一瞬混乱するが、冷静を装う。アレックス・バーンはモニターの変更を指示すると、事故が起きた別の実験部屋が映し出されると、血を流した研究員が倒れていた。カメラを動かすと白い毛の筋骨隆々の獣が立っていた、カメラに釘付けになるアレックス・バーンと研究員、白い獣は右手に持っていた顔が血だらけの研究員女性を、ゴミ箱にゴミを投げるように床へ投げつける。

アレックス・バーンはすぐ研究員達に避難と特殊部隊を要請、すぐに特殊部隊に連絡、スクリーンでは
白い獣は拳をガンガン壁に叩きつけ、咆哮。カメラを見つけると首を傾げ、視界から消えると、ガンガンと扉を叩く。白い獣の後ろにある自動ドアが開くゾロゾロと、特殊スーツを装備し麻酔銃を構えた男達が中へ入ってくる。後ろに振り返ると白い獣は、ダッシュで間を詰めると、特殊部隊の前に立つ。
見上げるほどのデカさと威圧感に一瞬、たじろぎ
麻酔銃の銃口を白い獣に向けると、左腕を振り子のように振ると、いとも簡単に隊員の1人を壁際に吹っ飛ばす。それを合図に間髪入れず、隊員達にパンチ、そして蹴りの体勢にはいった瞬間、白い獣は動きを止めると、そのまま前に倒れる。

麻酔銃を構えた隊員は手が震えていた。その麻酔銃を降ろすと、後ろに倒れる。口から血が流れていく。特殊部隊は全滅、この光景に絶句するアレックス・バーンだが、すぐに的確な指示を出すと慌ただしく動き出す。アレックス・バーンは背もたれに深く座り、天井の一点を見つめ、視線をモニターを移すと、フォークリフトで運ばれていく白い獣をジッと見て、肘掛けを叩き立ち上がり、モニター室を出ていく。廊下を小走り、突き当りの階段を降りていく。最近体重が増えてきたので、エレベーターではなく、あえて階段を使っている。10分後、地下三階の実験室に辿り着くと、事故が起きた現場への廊下を走っていると、血相を変えた研究員がこちらへ駆け寄ってくる「アレックス研究長、大丈夫ですか?」「あぁ、私は大丈夫だ、君たちこそ、大丈夫か?」「はい大丈夫です、ですが。」俯く研究員
さっき見たモニターの映像で、白い獣に殺された研究員は、目の前にいる研究員の同期だった。

今にも泣きそうな顔をした研究員に、アレックス・バーンはなんて声をかければいいかわからなかった。黙っていると、後ろにいた研究員が言う「あの白い獣はどこにいますか?アレックス研究長。」「この下の収容施設にいるだろう。」そう言うと踵を返し
突き当りの階段へ走っていく。2人の研究員が慌てて追いかける。その3人をただボーっと見ていたアレックス・バーン。止まっていた足を動かし、地下4階へと続く階段を降りていくと、さっきの3人が収容施設を警備する屈強な男2人に止められる、研究員の3人。「そこを開けろ。」「駄目です。」押し問答が続いている間に割って入る。「いい加減にしろ、なにをするつもりだ。」怒鳴り声をあげるアレックス・バーン、3人の研究員は静かになる「同期を殺した白い獣を殺しに」スボンに装着したホルスターから拳銃を取り出す。後ろの2人も拳銃を向けてくる、警備員2人も拳銃を向け、今すぐ拳銃を降ろせと言うが、頑なに降ろさない3人に、アレックス・

バーンは扉を開けろと命令する。「え?何故ですか?」「いいから、開けろ。」指紋・眼球の認証が終わると扉が開く。中へと入っていく3人を見届ける
アレックス・バーン、警備員は「いいんですか?」
「仕方ない。何を言っても話を聞かないだろう。好きにさせてやれ。」扉の奥は実験の失敗作が閉じ込められ、光を求め毎晩叫んでいる。警備員でさえ立ち入るのを躊躇う、数分たったが戻ってこない、そろそろを扉を閉めようとした時、3発の発泡音が聞こてきた。次の瞬間、ドサッと何かが飛んできて壁に

ぶつかり落ちる。警備の男が腰を抜かし、その場で崩れ落ちる。さっきの研究員3人が見るも無惨な状態で、顔がぐちゃぐちゃで原型を止めないほどに、腕と脚もありえない方向へ曲がっていた。「すぐに閉めろ、早く。」アレックス・バーンの怒鳴り声に、立ち上がると、開閉ボタンを押す。閉まる時間がこれほど長く感じることはなかった。白い獣が扉を破ってくるのではと、きがきではなかった。

扉が完全に閉まると、3人の死体を見て、警備員に視線を移すと、「今日でこの場所を閉鎖する。」
警備員は唖然とする、「ちょっと待ってください。いきなり言われても、困ります。」「1ヶ月の猶予は与えてやる、その間に仕事を探しておくことだなぁ。」
警備員の2人を置き去りにして、その場所を去る
アレックス・バーンの表情は曇っていた。

テントの寝袋に身体半分入れて、パソコンをいじっていた。出来る限り情報が欲しかった。
ある記事が目に止まる。「有名フリージャーナリストが行方不明、謎の組織を追いかけたのが原因か?」
その記事には様々な憶測が書かれていた。
車の止まる音が聞こえると、マリソンがテントに向かって歩いてくる、テントの中に入ってくるとマリソンは紙袋を渡してくる。「なにも食べてないでしょ?ほら。」紙袋を開けるとハンバーガーが2つとフライドポテトにチキンナゲットが入っていた。
 
「ありがとう。ちょうど腹が減っていたんだ。」
ノートパソコンを横に置くと、紙袋からハンバーガーを取り出し、包んでる紙を半分はずすと、勢いよくかぶりつく。「ねえ、明日大丈夫かな。」もう一つの寝袋に入るマリソン、ハンバーガー2つをたいらげると、次はフライドポテトを口に放り込み咀嚼音をたてながらしゃべる。「何を心配してる。大丈夫だろ?」手を休めることなくフライドポテトを口に放り込む。「そうかな、なんか不安なの。」
チキンナゲットをマリソンに差し出す「食べろよ。」
受け取ると、チキンナゲットを食べる。
「美味いか、」頷くマリソン「ほら食べろよ。」
チキンナゲットのはいった紙容器を渡すと、マリソンはチキンナゲットを全部たいらげる。
マリソンはゲップをする。「どうだ、満足したか。」
頷くマリソンは、紙袋に入っていた紙ナプキンで
口を拭く。「お腹いっぱいなのに食べちゃった。明日からダイエットしないと。」「それでいい、さぁ歯を磨いて寝るかぁ。」寝袋の横に置いてあるリュックサックの中から、歯磨きセットとペットボトルの水を取りだすと、テントの外で歯磨きをはじめる。
マリソンはシュワルツコフの隣で、不安を消し去るように歯磨きを始めていた。シュワルツコフも

白い獣は収容施設の一番奥にいた。両手と両足に電子器具が取り付けられていた。耳をピンと立て何かを聞いていた。何度も何度も咆哮、何かを訴えていた。鉄格子に掴むと電流が流れ、すぐに手を離すと、壁を何度も何度もタックルするが、途中でやめてしまい、その場に倒れる。

アレックス・バーンはモニター室に戻ると、オペレーターの1人が駆け寄ってくる。「アレックス研究長、あれを見て下さい。」指を指した方のモニターを見ると、壁に何度もタックルする姿の映像が映し出される。眉間に皺を寄せ険しい顔をするアレックス・バーン、さっきまで実験を成功と考えていたが、この白い獣の行動を見て考えを変えた。やはり
動物を人間並みの知能にして、生物兵器として操るのは無理だと悟ったアレックス・バーンは決断する
「明日、あの生物を殺処分する。特殊部隊の派遣要請を、念の為に100人は呼べ、いいな。」「わかりました。」

そう言うと、再びモニターを見つめる。白い獣は
カメラをジッと睨みつけていた。数分間睨みつけ、 
壁に寄りかかり、そのまま寝てしまう。 
モニターを見ていると、内ポケットに゙入っている携帯電話が鳴る。素早くボタン押し携帯電話を右耳に当てる。「はい、もしもし。」「アレックス、私だ。」
「カレーア様、どうしました?」「アレックス、実験は上手く行っているのか?」一瞬、言葉に詰まる。
成功してると言いたいが、言えずにいると「上手くは言ってないみたいだなぁ。仕方ない、そろそろ実験への援助を打ち切らなければならない、わかっているよな、アレックス。」唇をかみ身体を震わせる、アレックスのプライドは傷ついた、もう少しで、あともう少しで実現出来る。我々RATSが、この世界を裏の世界を支配するには、この技術が必要なのだ。それをこいつはわかっていない。怒りたい気持ちを抑え「わかりました。必ず成功させます。だから、もう少し時間と援助をお願い出来ないでしょうか?」少し沈黙が流れるが「わかった。援助は継続しよう、ただし期限は半年、いいな。」「分かりました、それでは。」静かに携帯電話を切る。半年、たった半年でどうにかなるだろうか。動物の生物兵器の実験とは別に、もう1つの実験が平行して行われていた。それは動物の能力を人間に移植しその能力を使って世界を支配する。名付けてヒューマニアン計画である。この実験はあと一歩で完成する自信がある、これが完成すれば世界を支配できるほどの技術が確立する。
あとは人体実験のみ、どうする?無理やり強行するなら、生贄が必要だがどうやって調達する。
そうだ、明日来る特殊部隊の何人かを生贄にすればいい、悪魔的思考が芽生え、アレックスの心の中にいる悪魔が囁いた。アレックス・バーンはすぐに電話をする。「もしもし、特殊部隊の人間を至急、明日こちらに呼んでくれ。大至急いいな。」「分かりました。」電話を切ると、研究員数人を呼び出し、明日の準備に取りかかるよう指示を出し、モニター室を後にする。

デジタル時計が9時を知らせると、特殊部隊の一団が大部屋に集まる。特殊部隊の隊長のニコルソンが
大部屋の真ん中にいるアレックス・バーンに歩み寄ると握手をする。「アレックス・バーン研究長、お呼びいただき、ありがとうございます。」「いえ、こちらこそ。それで今日の仕事はなんですか?」
仕事の内容を聞こうとする隊長のニコルソンに、アレックス・バーンが指をパチンと鳴らすと、研究員たちが、ジェラルミンケースケースを両手に持って現れる。「ワタシが開発した装置の実験体になってくれませんか?。」「なんだって、どういうことだ。話が違うじゃないか。」ニコルソンはアレックス・バーンに詰め寄る。「最後まで話を聞いて下さい。この実験に成功すれば、人知を越えた力を手に入れることが出来たらどうしますか?」目を見開き、ジーーと
見る。眼力の強さに「その話、ホントなのか?」「あぁ、本当だよ、ただし。」「ただしってなんだ?早く教えろ。」「メリットがあれば、デメリットもあるだろ?」意味深な言葉に唾をゴクと飲むニコルソン、「まさか死ぬってことか…」アレックス・バーンはニコルソンの右肩に手を置く「そうだよ。それでもこの実験体になる価値はある。我々は新たな進化を得て、この世界を支配し、愚民どもは家畜化し奴隷とする、素晴らしいとは思わないか?ニコルソン。」ニコルソンの心は揺れていた。そんな力を手に入れることができるのかと半信半疑でいたが、胸の中にある野望が疼き出す。そしてニコルソンはアレックス・バーンに「わかった、実験体になろう。」と言うニコルソンに部下達は困惑するが、ニコルソンは嫌ならここから帰っても構わないと言うと、15人が急いで、その場を立ち去っていく。残った85人はその場に残り実験を開始する。研究員が緑の液体が入った注射を1人1人に打っていく、85人全員に打ち終えて10分後、全員が身体の不調を訴え始める。そこから20分、身体の動かない人間も薬の副作用に耐えられず死んでいく中、もがき苦しむニコルソンと隊員達。さらに30分、大半の隊員達が死んだ中で、かろうじて生き残った6人が立ち上がる。ニコルソンと隊員達にRAT開発の制御用ベルトを渡し、
そのベルトを装着すると、人間から爬虫類へと姿を
変えていく。「なっ、なんだ。この姿は、」
アレックス・バーンは成功の瞬間をこの目に焼き付けていた。













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