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4449ギフティ

9/20に上場する4449ギフティの内容を見てみます。

見ていく項目
■業容
■業績の推移とP/L
■バリュエーション
■株式の需給

■業容
eギフト事業を展開しています。
企業や個人がメールやSNSに添付して相手に贈り、相手は品物やサービスを小売店で受け取るものです。
一般に「ソーシャルギフト」と称されるサービスです。

売上は2つに大別されます。
1 キャンペーン目的の法人利用に対する発行手数料 構成比62%
(2016年4月に開始)
2 個人がギフトを買う毎に発行企業から受ける手数料 構成比12%
  発行企業に提供するギフト管理システム利用料 構成比22%
(2011年3月から開始)

業績の伸びをけん引しているのは、サービス開始時期からも明らかですが「1」です。2Q時点でも既に前年通期を上回っています。
1はユーザー企業にとり以下のようなメリットを与えると思われ、その点が評価されているようです。
① SNSなどのデジタルマーケティング促進
② 管理コストダウン
③ アンケート集めが容易になる

また、同社はトヨタ系ファンドの出資を受けていますが、今年から試験的にトヨタのディーラー11店で来店客への提供を開始しています。

2はシステム利用企業としてローソン、KDDI、スターバックスを挙げており、これらは売上依存度の高い取引先として金額も開示されています。

システム利用料はSaaS形式ではありますが、同サービスの構成比は高くないのでメインで考える点ではないようです。

■業績の推移とP/L
売上を見てみます。
2017.12から加速していて、その前期の売上が1.7億であったところから増収額で+3.8億、+5.6億、今期計画(2Q時点)+6.5億となっています。

原価率を見てみます。
18.12では16.5%で、労務費が約8%、外注費が約5%でした。
このうち、労務費は売上倍増にも関わらず微減で、コメントは「ギフト管理システムの増収に伴う保守原価増」とだけあるので主力の法人向け発行手数料ビジネスについては原価増を伴わなかったと見て取れます。
19.6は10.9%で、こちらもコメントは「ギフト管理システムの増収に伴う保守原価増+受託開発案件による開発原価」ですので、同様のことが言えそうです。
このことから、主力の法人向け発行手数料ビジネスは倍増ペースで伸びても労務費を中心に原価がほとんど増えないビジネスで、原価率は更に低下していくものと認識できます。

販管費率を見てみます。
18.12では58%で、給与が約12%、支払手数料が約12%でした。
19.06では54%で、給与が約16%、支払手数料が約11%でした。
増収率以上に積極的な人的リソースへの先行配分が見て取れますが、それでも販管費率全体としては低下しているので、販管費に占める売上に連動しない固定的な費用の割合が高い(増収に伴い比較的素直に販管費率が低下すると考えられる)と認識できます。
また、販売費/一般管理費別の対売上比率で見ると
販売費   : 17.12が26%、18.12が20%
一般管理費 : 17.12が42%、18.12が38%
となっており、販売費に対して効率よく増収できていると言えます。

■バリュエーション
現状では、リニアな成長を見込んでもPERやPSRの見地では公開価格の時点でフェアバリューとは言えない印象ですが、
PER:今の高い販管費率を見積に含めるのは適切ではない ✖
(固定的な費用の売上比率が高い+販売費率も低下している+売上成長率が高い)
PSR:SaaS間でPSRをヨコ比較をするのは適切ではない ✖
(SaaSとは見込まれる営業利益率が異なる)
との理由で、
「売上総利益をベースに見積もる」
としてみます。
極めてザックリした計算ですが、販管費/売上総利益が40%というのがリニアな成長を前提とした自然な落としどころになるとすれば、時価総額/売上総利益が18倍程度がPERで言う40倍程度に応答します。
以上から、
「時価総額/売上総利益=18」をフェアと認識し、
・ 来期増収額を今期計画比8億、
・ 来期原価率を10%、
と見積もり、
「時価総額420億、株価1,700円」
と認識します。

■株式の需給
<上場当初>
公開株数 504.9万株
ロックアップの無いVC、法人保有株 121.5万株
(三越伊勢丹イノベーション、DeNA。共に5%未満)
⇒ 626.4万株

<12/19、または1.5倍で解除>
VC保有株 722.7万株
(KDDI新規事業育成投資事業有限責任組合系列 282.9万株、
ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合 271.2万株、
株式会社インスパイア系列  168.6万株)
⇒ 計1,349万株

上場時の吸収金額はマザーズとしては大きいものの、トヨタとの連携や増益率の高さなど、個人投資家人気がつきそうな部分があるため致命的ではない規模です。

一方、「1.5倍でのロックアップ解除」となると単純計算で潜在的にその3倍の流通金額、公開価格を1,250円で計算すると252億円になります。
マザーズでは100億円超えでも機関投資家が参入しないと困難な中、今の市場売買代金では1.5倍超えをこなして進むのは難しい印象です。
(KDDIは取引先であるとか、ジャフコは主幹事系列であるという点から必ずしも売ってくるとは限らないですが)


小型株、いまはとりわけグロース株の評価を業績面から行い、見た目のPERではわからない「成長性に鑑みて割安な銘柄」の発掘を目指しています。IPOセカンダリーなど。