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「あの子はこの世界で7年間幸せに生きた」-現代アートの力

アイ・ウェイウェイという著名な現代アーティストがいます。
私は現代アートに興味を持ち始めてまだ間もないのですが、とある作品を見て、彼のファンになりました。現代アートというと取っ付きづらい・意味不明、などのイメージがある方も多いと思います。私もそうでした(し、今もちょっとそう)。でも、そんな方にこそアイ・ウェイウェイの作品は刺さるのではないかと思い、アート初心者の私が紹介してみたいと思います。

全く疎かった私がアート好きになったきっかけ

美術館に頻繁に行くようになったのは、暑い夏、子供と過ごせる(そして大人も楽しめる。ここ重要)場所を探した事がきっかけです。
もちろん子供といると1つの作品をじっくりと見ることはできず、勿体無いところもあるのですが、それでも雑然とした家から出て、作品のためだけの贅沢な空間に身を置く事はシンプルに癒しになりました。

また、日曜日の朝、子供が生まれてから何となく流しているEテレでは「日曜美術館」が放映されていました。有名なオラファー・エリアソン氏の展覧会特集を見て、「なんだこれは、、直接見てみたい!」と思ったのもきっかけの1つです。(ご興味ある方は麻布台ヒルズで開催されている展覧会をおすすめします、、!)

さらに、長年フォローしているちきりんさんがアート好きという事が影響していると思います。少しずつアートへの興味が増してきていた時、ちきりんさんのツイートで知った、今年森美術館で開催された展覧会「ワールド・クラスルーム」を1人で見に行きました。そこでアイ・ウェイウェイ氏の作品と出会いました。
展覧会は全体を通して、社会問題と向き合い、懸命に見る人に伝えようとするアーティストの姿が特に印象的でした。言語をも凌駕して深く鋭く見る人の心に訴えるアートの力に圧倒されました。

「あの子はこの世界で7年間幸せに生きた」

展覧会で出会ったアイ・ウェイウェイ氏に興味をもち、調べて行く中で彼の"Remembering"という作品に私は言葉を失いました。

その作品はドイツ・ミュンヘンの展覧会で屋外に展示されていました。縦10メートル、横100メートルくらいの長方形いっぱいに、中国語で

「あの子はこの世界で7年間幸せに生きた」

と書いてあります。

2008年に四川省で起きた大地震では、学校の建物の作りが粗悪であったために沢山の子供が亡くなり、人災と言われています。

この言葉は、倒壊した校舎の下敷きになって亡くなった子供の母親の言葉。大きな文字は、数千個の子供用通学カバンを並べて書いているのでした。

私なんかの語彙力で説明しようとすると陳腐化してしまうのですが、これほど胸に突き刺さる「言葉」はありませんでした。母親の言葉、作品の大きさ、カバン。親達の叫び声が聞こえてくるようです。アイ・ウェイウェイという人物がどれほど子供達、そしてその家族に寄り添っているかが痛いほど分かりました。

また、亡くなった子供の人数や氏名を公表しなかった中国政府に対して、アイ・ウェイウェイはインターネットを通じて協力者を募り、地道に1人ずつ亡くなった子供の氏名を記録して公開し、最終的な人数を突き止めています。
(同氏はこの他にも政府批判する作品を公表し、当局に拘束された事もあります)

アートが訴えるもの

Amazon Prime Videoにアイ・ウェイウェイ氏のドキュメンタリー"Ai Weiwei: Yours Truly" があり、この地震に対する取り組みも含めた彼の半生や代表作、製作風景を垣間見ることができます。

このドキュメンタリーのメインとなる作品はRememberingではなく、その何年か後にアメリカのアルカトラズ収容所で試みられたインスタレーションです。詳しくはぜひ本作を見ていただければと思いますが、共通して「自由を拘束する権威に抗い、拘束された人々に寄り添う」力強いメッセージとなっています。作品が起こした奇跡を取材した、胸を打たれる内容です。

人生で何をしたいのか、という事を時々考えます。自分に言い訳をしているような情けない気持ちになる事もあります。活躍するアーティスト達は、想像を絶する苦しみに耐えながらも、ただひたすらに人生の目的に誠実に、正直に生きているように見え、畏敬の念に駆られます。それが最もアートに惹かれている理由かもしれません。

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