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GLOBE・GLOVE(6)

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 バッテリーを組んだ僕らは、五年生にはレギュラーになり、六年生になる頃には市の小学校の間でも名が通るほどの二人になった。
 六年生になった美緒の身長は160センチ。チーム一番の長身で、僕より5センチも高かった。腕を伸ばせば、180センチ近い高さになる。しかもサウスポー。その高さから投げ下ろす速球は、カットボールのようにほんの少し右バッターの内側へ食い込むように変化した。バットに当たっても内野ゴロになる。そして時に曲がりすぎるそのボールを捕球してストライクをとれるのは、チームで僕だけであった。
 凡打の山を築き、僕たちのチームは市大会の決勝に進んだ。
 僕たちの優勝を阻んだのは、下馬評で優勝確実と言われていた越田小だった。
 川村という右投げ本格派ピッチャーのワンマンチーム。うちのチームは誰一人、そいつの速球をバットに当てることすらできなかった。しかし美緒も、打率も七割超えを誇る川村を、内野ゴロ二発に抑えていた。
 五回まで0対0が続き、六回の表、僕たちのチームについにチャンスが回ってきた。
 七番打者がパスボールで塁に出て、八番が空振った一球目に、ランナーは盗塁を企てた。焦った越田小のキャッチャーは二塁へ悪送球。ランナーは三塁まで進んだ。
 越田小の唯一の弱点はキャッチャーだった。もちろん僕よりもうまいが、川村のボールを受けるには役者不足だった。しかし、さすが川村は動じなかった。僕たちの監督がスクイズ決行を迷ったこともあり、低めインコースに立て続けに二球ストレートを投げ込み、あっさりワンアウトを取った。
 次は九番。僕の打順だ。打席に向かう足が、勝手にガクガク震えてきた。
「もしスクイズのサインが出たらどうしよう」
 とベンチを振り向くと、ネクストバッターズサークルから美緒が歩み寄ってきた。


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