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あなたのためにケーキを焼こう

 5月になってロングアイランドに雪が降るなんて初めてです。ラッキーにも私の住んでいる地区は、冷たい雨が降る程度で収まりましたが。春の兆しが見えないと言われ続けたこの一ヶ月。今朝も体感気温は冬並みです。本当、驚かされます。

 昨夜はあっという間に気温が下がり、強い雨足に窓が震えていました。そういう時は、なんだか寂しくなりますよね。心の底まで冷えてしまうというか。自分の中に蓄積されている「綺麗」がどんどん減っていくような気がして、遅い時間ではありましたが、DVDを引っ張り出してきて、大好きな「秘密の花園」を観ました。

 凍えるムーアにも春が来て、花が咲く喜び、風が吹く喜び。新しい命がいくつもいくつも生まれでて、大好きな人たちの笑顔が増える日々。小さな「綺麗」が重なって輝く光景は、例えようもなく愛しいものだと感じます。

 人はみんな不完全で不器用で、自分のことに精一杯。でもそれでもいいと思うんです。それをわかっていれば、隣に座っている人のあれもこれもを、少しは理解できるから。うん、「少しは」でいいんです。私は私で、あなたはあなたですから。

 だから、花を飾って、あなたのためにケーキを焼こう。それは私にとって、自分への癒しでもあるような気がします。

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 そうそう、あれから庭のニオイスミレたち、雨が続いたせいで収穫できず、これが最後と摘んできたのは64個。一緒にエディブルフラワーのヴィオラもまずは5つほど摘みました。薄曇りの空の下、菫色の美しさに魅了されます。

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 さあ、ヴィオラの似合うケーキを焼きましょう。と言っても忙しい平日、スタンドミキサーをひっぱり出さずとも、自分の手でぐるぐるかき回して作れるお手軽なもの。冷蔵庫から出しておいたクリームチーズが柔らかくなったらスタートです。

 冷凍のラズベリーも指先でざざっと潰し、生地に混ぜ合わせます。適当なところがいいところ、どんな模様が出るかはお楽しみ(笑)。焼き上がりにはヴィオラとチャービルの花を添えて、駆け抜けていく春を想います。

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 こういう時にはお気に入りの茶器も出さなくては。一杯のコーヒーがなんだか特別に感じられて、気分もぐっと変わります。今日はエノク・ウェッジウッド。今ではウェッジウッドグループに吸収されてしまいましたが、ユニコーンのマークが可愛いブランドです。

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 ニオイスミレ の砂糖漬けを作りながら、実は少々、生の花の味見をしているのですが、どちらかというと草っぽい。けれどエディブルのヴィオラはさすが。食べる用に開発されているためでしょうか、香り高いんです。口に入れればふわりと広がるのはまさに「春」。菫色の春なのです。

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 かつて、人生の最後にはタンジールに引越しして、海の見える高台の家に住み、イチジクやらオレンジやら、果樹がたくさん植えられた庭で、大好きな人のためにケーキを焼いてお茶の支度をするのが夢でした。

 今は住みたい場所がちょっと変わりましたけれど(それはまたいつか)、ふと思ったんです。あれ、ということは、、、好きになるべき人は甘いもの好きが前提?

 好みのタイプの中に「甘党」という項目を追加するべきだったのだと(自分はもっぱら焼く方ですからね)、今更のように思う今日この頃です。

 「あなたのためにケーキを焼こう。」

 ニューヨーク、まだまだ自粛生活は続きますが、明日も明後日も、綺麗を求めて自分らしく生きていこうと思います。



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