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【推し短歌】君のロマンが胸に響くとき 

内緒だよ
音符にそっと口付けて
薔薇色の火を
隠す鍵盤

情熱は
秘められたから
より一層
君の心で
咲き誇る花

好きなのは
重なる旋律
淡々と
私を置いて
行かないあなた

その音は
暮らしの中に溶け込んで
あなたの秘密
教えてくれる



ピアノを聞くならグレン・グールド。
もうずっと前から。
年季の入ったコアなファン。

最初に聴いたのはモーツァルト。
天才作曲家は私には
少々軽やかすぎて明るすぎて
けれどグールドの音になった瞬間、
驚くほどクールで笑ってしまった。

あの日からまずはグールドで聴く。
グールドで聴いて心にしっくりくる曲を選ぶ。
淡々と、淡々と、それがたまらなく好き。

ショパンを初めロマン派音楽を
グールドはほとんど弾かなかった。
諸説あるけれどある日どこかで見た記事が
今も私の心に鮮やかに残っている。
真偽のほどはわからないけれど
私にはそれで十分、いやこれしかないと思った。

実はとてもロマンチストなんだ。
だからショパンは弾かない。

ものすごく納得した。
ああ、だから私はグールドなんだと思った。
私もショパンが好きだけど
ポリーニが一番だと思っている。
機械的だ、技巧が勝ると言われても
それが良い、それだから聴いていられる。

もしグールドがショパンに全力で向き合ったら
何が残されただろうか(実際には2・3ある)。
本質がむき出しになったグールド。
聴いてみたようなそうでないような、
ああ、やっぱり聴いてみたいかな。
でもきっと私の耳にはいつもと変わらない
鼻歌交じりのグールドがいるような気がする。

愛は大きな声で叫ばなくていい。
ひっそりと胸に秘めて、
だけど重なっていく旋律の中にふと
何かを感じるくらいでちょうどいい。


”推し短歌”2回目は
グレン・グールドに捧げます

1作目の”推し短歌”記事はこちら


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