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【H】無敵の若鷹軍団、終わりの始まり

 一時期はソフトバンクにとっての看板選手である中村晃や、和田毅の名前も上がったが、山川穂高の人的補償が甲斐野央に決まった。年老いた長距離砲の補填としては大きすぎる、故障を乗り越えた中堅の救援エースの放出はソフトバンクにとって何を意味するのだろうか。

西武の得で間違いなし

 まず、今回のFA騒動でどちらが得したのかと言うと、FAで選手を引き抜かれた側の西部であるように感じる。昨季、抜かれた山川の穴こそ大きかったものの、その分の若手が台頭したのだ。中日や日ハムと同じく若手を一貫して使っていたので、目先のAクラスと言うよりも数年後の黄金期を目指していたはずだ。大味な山賊打線から、機動力と投手陣でスマートな野球をする「西武の野球」に回帰した印象だ。

 そんな未来あるチームの中に、騒動を起こして謹慎していた山川が戻ってきても、ベンチを温めるか、スタメンを用意されていても昨季頑張った若手陣のモチベーションが下がってしまうだけだったのではないか。ましてや、そんな清らかな水に浮かぶラードのような存在となった彼の補填がどれだけいても足りないと言われている救援の、それも40試合以上を投げているバリバリの主戦級が来るとなれば、西武は素晴らしい補強をしたことになるだろう。

ソフトバンク、投壊必至

 次はソフトバンクについて。このままでは、来季の投手陣崩壊は免れないだろう。1昨季のオフに千賀滉大がMLBへと渡り、突貫工事で先発転向をさせた藤井皓哉も結局は球数を抑える投球ができず、救援へと戻されてしまった。有原航平や和田毅のような、ベテランの投手を何とか5回まで投げさせ、細切れ継投で何とかものにするという苦しい戦い方をしていた。その屋台骨の一角を守っていた甲斐野が今回抜けてしまったことで、その投手陣は一気に崩れてしまうのではないか。打線が5点取っても、6点奪われてしまったら負けてしまうのが野球というスポーツだ。打つ方に全振りをした常勝軍団が現れないのはそれが最大の理由なのではないか。

 そんな戦力云々のことよりも、チーム状況が気になってしまう。若手選手達にはチャンスが与えられず、ベテランの選手達はぞんざいに扱われ、油の乗った中堅の選手は人的補償のコマにされる。工藤公康前監督が作り上げた、家族のようで全員が切磋琢磨して成長していく無敵の若鷹軍団は音を立てて崩れ去ってしまったというわけだ。果たしてもう一度、ソフトバンクが常勝軍団となることはあるのだろうか。

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