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囲碁と暴力が理の韓国映画『神の一手』を見ました

わたしは基本アニメばかり見るアニメ・クンですが、たまには映画を見ることもあります。しかし今回見た映画はかなり「アニメ的」というか「コミック的」な荒唐無稽さがある作品だったかもしれません。以前オタクの方からも「非常にアニメ的」との評を聞いて気になっていた作品、今日たまたま検索をしたらGyaoで無料配信をしていたので見てみたところ大変刺激的なエンターテイメント作品で楽しみました。3月17日まで無料で見られるらしいです。

プロ棋士テソクは、兄の頼みで一度だけ危険な“賭け囲碁”に協力するが、その世界の元締めサルスの一団に兄を殺され、自身も殺人の罪を着せられて投獄されてしまう。すべてを失ったテソクの心深くに宿るのはサルスへの復讐心。独房の壁に碁盤を描き、隣の独房囚人と壁越しに始めた囲碁対局で腕前を磨き、肉体も鍛え上げていく。やがて出所したテソクは、盲目の天才棋士“ジーザス” 、片腕の細工師モクス、イカサマ棋士コンスらとチームを組み、ついにサルスと対峙する。一度は人生を諦めた男たちは、それぞれが抱える野望を胸に、負ければ自分が死ぬ運命の勝負に“神の一手”で挑んでいく――!!
(公式ストーリーより)

あらすじからしてめちゃくちゃに濃い。

バイオレンス囲碁映画

兎にも角にもバイオレンスです。裏社会での"賭け囲碁"がお話のテーマになっているのですが、そのため血みどろの抗争シーンもバンバン出てきます。フィクションの醍醐味の一つとして日常から乖離したセンセーショナルさがあるとわたしは思っているのですが、まさに激しい暴力こそがエンターテイメント! と言わんばかりの姿勢には思わず身震いしてしまいます。
とにかく血が苦手な方にはこの時点であまりオススメはできませんが、一方で「暴力=エンターテイメント」という構図に頷ける方だったらかなりオススメです。血は出ますがそこまでグロさはないので、スプラッターというほどではないのではと思います。

最初に主人公テソクの兄が”賭け囲碁”に負けて拷問を受けてしまうのですが、この流れがあまりにも無駄がなくて驚きました。
まず碁石を靴下に詰めて振り回すことで凶悪な武器に変えてしまいます。「車の中に閉じ込められた時は靴下に小銭を入れて窓を割る」なんてライフハックを耳にしたことがあるのですが、それだけでも遠心力と硬度を活用した殴打がどれほど破壊力があるのかということが理解できます。
続いて流れるようにその石をもう一度取り出して”碁石を食べさせる”という拷問に切り替わります。当然錠剤なんて比べ物にならない大きさの異物なので、これまたキツいシーンです。
これらのシーンを見て囲碁のシーンから内外の人体を痛めつける展開がこんなに自然に生み出せるのか! とかなり驚きました。日常に潜むバイオレンスの怖さとでも言いますか、この発想のキレからは、恐ろしげな拷問器具を使うものとはまた一味違う暴力に対する知識の持つ恐ろしさがあります。

一方テソクの復讐劇も負けてはいません。刑務所にて囲碁の実力と喧嘩の腕を両方磨いたテソクは、巧妙な作戦によってかつての恨みを晴らすべく、一人また一人と復讐を遂げて行きます。バイオレンスとバイオレンスのぶつかり合い、その爽快感と緊張感こそがこの作品の大きな魅力ではないでしょうか。

強いやつが生き残る

この映画の根底にあるルールはあまりにも明快です。力があるやつは喧嘩が強い、知恵のあるやつは囲碁が強い、故に「力と知恵があるやつは”強い”」のです。臆病なプロ棋士であったテソクは、まず”力”を手にするために努力していきます。

この点で最も本質的な勝負ではけしてありませんが、囲碁という要素も大きな役割を果たしています。イカサマを使うこともお互いに日常茶飯事ですが、囲碁はあくまで一対一で公開された盤面と石で”白黒つける”だけのシンプルな勝負ですので、ポーカーや麻雀のようにイカサマだけで勝つことはできません。相手を騙し、油断させ、強い代打ちをいかにしてぶつけるか、という点に本作の攻防の一端があります。こうした構図からも、純粋な”力”への信頼を感じますね。

『神の一手』で描かれているのは純粋な強さと強さの戦いです。だからこそ血で血を洗う凄惨な復讐劇のお話ではありますし、互いに実に容赦のない抗争ではありますが、そこには不思議なまでの”正々堂々”とした感触が(”正々堂々”なんて言葉とは程遠い展開ばかりでありながらも!)あるような気がしています。
敵も味方も囲碁の勝敗という結果そのものに関しては決して覆すことはできないことで、囲碁という決闘手段の神聖さのようなものが同時に生み出されているのが良いですね。

「盲目の達人」だとか「自然な流れで囲碁バトル」などかなりアニメ・マンガチックな荒唐無稽な展開もじゃんじゃん飛び出してきて、とにかくスリリングなバトル・エンターテイメント作品として楽しい作品でした。退屈な日常に刺激的な作品を求めている方にはぜひおすすめの映画です。

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