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家の灯り

もともと外に気持ちが向きがちな性格だった。

かつて猫を飼い始めるまでは、ふと思い立ってフラッと旅に出ることが多く、かなりの問題人間だったと思う。

猫を飼い始めてからは、家をフラッと空けることができなくなった。

最初は不自由に感じたが状況を前向きに受け止めて、次のように考えてみた。「地に足のついた人間」という生き方を身につける期間だといいきかせたのだ。

自分の居場所を手に入れることを目指した。

◇◇◇

2匹飼っていた猫は、1匹になり、私は定職を得た。

仕事と1匹の猫がいい意味で足かせとなり、私はほどほどの不自由さを受け入れて人並みの生活を送ることができていたのだ。

夫と結婚したら、夫という足かせも増えた。と同時に、猫の世話をお願いできる人ができたので、これまでとは違う自由も増えた。

猫がこの世を去り、仕事も変わり、徐々に足かせ的なものは減ったのだが。

心は自由ではなかった。

なぜか?

「家に居るべき自分」という精神的な足かせを自分が自分にかけていたからだ。

その気づきを経て、夫との話し合いを重ね、今は好きなときに好きな場所へ出かけることができる自分を取り戻した。

◇◇◇

長い間、パソコンの壁紙といえば、世界の美しい景色であった。実際に見ることは難しいであろう遠い世界の景色だ。家に居るべき理由があり、フラッと出かけることが許されなかった時期には、願っても叶わない自由のシンボルだった。

今は、我が家の灯りをパソコンの壁紙に選んでいる。

どこか遠い世界であっても自分がいこうと思えばいくことだって選べるのだ。そんな美しい景色を見ることができたとしても、最終的に戻るのは自分の家。

たとえどんなに遠くに居たとしても、私には特別な場所であるから。

家の灯りは私の居場所のシンボルだから。