Self-Compassion Scale(セルフ・コンパッション尺度)についての議論(19/2/24追記)

"The Development and Validation of a Scale to Measure Self-Compassion" (Neff, 2004)で発表されたSCS尺度

上記のよう有光先生が日本語版を開発してくださっています。

自分へのやさしさ(5 項目),自己批判(5 項目),共通の人間性(4 項目),孤独感(4 項目),マインドフルネ
ス(4 項目),過剰同一化(4 項目)の 6 下位尺度から構成され、合計得点をセルフ・コンパッションの得点として使います。


しかし、2016年になりイタリアのPetrocchiらが、ポジティブな下位尺度とネガティブな下位尺度で異なる特徴を持っているのではないか、ネガティブな下位尺度を逆転させて合計得点を算出していることが、精神的健康との関連を過剰に示すことにつながっているのではないかと指摘しました。

"Protection or Vulnerability? A Meta-Analysis of the Relations Between the Positive and Negative Components of Self-Compassion and Psychopathology"という論文(Muris and Petrocchi, 2016)で、

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こうしてみると、赤いポジティブな要素と、青のネガティブな要素で相関の大きさが結構違います。つまり、精神的健康への影響は「自己へのやさしさ」<「自己批判」となっており、セルフ・コンパッションの概念をちゃんと反映していないのではないか?という指摘です。

「自分にやさしい」ことよりも、「自分に厳しくない」ことの方が精神的健康を予測することになります。そうなるとネガティブでないことの方が重要となり、セルフ・コンパッションの魅力として語られることの多いポジティブな要素が実際以上にもられてない?という指摘が成立するわけです。

これに対して、Neffはそれはもう結構な勢いで反論論文を書いていますが、それは次回以降の投稿で紹介していきたいと思います。

以下、追記

上記の論文で参照された研究18のうち、6つはSCSをより細かく検証している。そして、下記のようにネガティブな下位尺度の方が精神病理性との関連が一貫して示されているとしている。

”For the positive indicators of self-compassion, unique contributions were found for mindfulness (in 4 out of 6 studies) and self-kindness (in 2 out of 6 studies), whereas common humanity never emerged as an independent predictor (in 0 out of 6 studies). 

For the negative indicators, unique predictive value was found to be remarkably better: self- judgment, isolation and over-identification each showed unique significant contributions in 4 out of 6 studies. ”

果たして、SCSを単純加算してよいのだろうかと思いますし、実際にこの論文ではポジとネガを分けて分析すること、ネガティブな下位尺度を外して使用することも選択肢であるとしています。

As a result, the three dimensions of self-kindness, common humanity and mindfulness as rep- resented in the SCS/SCS-SF are not necessarily distinctive of compassion, but seem to tap a number of already known protective factors.

上記の文とかけっこう過激ですね。別の個所でも、そもそもの定義について踏み込んだ発言をしています。

どおりでDr. Neffもこのあと、反論論文を連発するわけです。

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