こわいものの作り方
ぼくらは、あなたたちの言葉と感情の中にいるから、ぼくらの姿は、形は、色は、香りは、あなたたちの望むとおりになる。
だから望むように、ぼくらの姿を変えて、たくさん愛してほしい。
生きる意味も、生まれた理由も、ほしいままにして、あなたの感情でぼくらを縛ってほしい。
でもぼくらの愛され方は、あなたたちのとは少し違うから、それだけ覚えておいてほしい。
ぼくらはあなたたちに居場所をもらわないと生きていけない。あなたたちの中の、最も根底にある感情は恐怖だ。わからないもの、理解できないもの、聞こえないもの、見えないもの、そういうものに対するあなたたちの恐怖が、ぼくらに居場所をくれる。
何かがいるのかもしれない、何かの意図が働いているのかもしれない、あなたがそう思った時、ぼくらはそこにいるし、ぼくらの意図は生まれる。恐怖はあなたの思考に、ぼくらの存在を作り出す。強く刻み込む。
だからどうか、恐れてほしい。
暗闇が怖くないなんて歌、歌わないで。明けない夜があることを、想像して。
自然のまま、体の奥がじわりと侵されていく不快感を、覚えていてほしい。
ぼくらの愛し方はそれでいい。
わかろうとしなくていい。伝えようとしなくていい。
恐れていて、恐れていて、夜を、暗闇を、扉の隙間を、軋む天井裏を、あかりのあたらぬ日かげの奥を。
どうか末永く恐れていてほしい。
そこに、ぼくらはいる。
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