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【新潟】時を超えて愛される酒蔵〜今代司〜

コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されたものの、まだまだ油断できない現実。

人々は”withコロナ”を考えながら生活することを余儀なくされています。

営業時間の短縮、ソーシャルディスタンスの確保、サービスの自粛…。

新潟駅から歩いて15分。1767年に創業された小さな酒蔵”今代司”も葛藤の中にいました。

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酒蔵見学やテイスティングの中止をしていましたが、6月6日(土)に再開。

以前と同じような営業はできていないものの、少しずつ前を向いて歩きはじめています。

今と昔を繋ぐ小さな酒蔵”今代司”の魅力を知るべく酒蔵に足を運び、お話を聞かせて頂きました。

明治20年。旅館業と酒の卸業からスタート

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”いまだい”じゃないんです。”いまよ”なんです。私たちが頑張ってもっとPRして、認知度を高めなきゃいけないですね(笑)

そうやって笑いながら私に説明をしてくれたのは、冬に入社したばかりの酒蔵案内人の女性。

もともと新潟出身だった彼女は、関東で就職をしたのち、生まれ育った新潟に帰郷した。

やはり、新潟が1番いい。恋しかった。と話す彼女の表情はとても柔らかく、にっこりした時の顔が忘れられない。

今代司は酒の卸業・旅館業を営み、明治中期より酒造りを本格的にスタート。

酒蔵は修繕しながら現代まで、ずっと使われ続けている。

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天井を見上げると、外から入り込むまっすぐで明るい日差しが蔵の中を照らし出す。

太くてたくましい、むきだしになった梁が力強く支えていた。

デザインではない。

風合い・雰囲気・年月を感じる厳粛な空間すべてが、今代司の歴史を物語っているのだ。

酒蔵の中に漂う酒粕の香りがどこか懐かしい。

おばあちゃんの匂い。

酒蔵を案内してもらう間、しきりにつぶやいた。

熊本の祖母が作った粕漬けが大好きで、おにぎりの中やお茶漬けに添えて食べていたことを思い出す。

私を包み込む酒蔵の香りが愛しくて。
全身が幸せな気持ちで満たされる。
酒粕が祖母の愛と優しさを思い出させてくれた。

現代まで続く木桶で作られる日本酒

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酒蔵をさらに奥に進むと、大きな樽がズラリと並べられていた。ひんやりとした空気が心地いい。

蔵は先代の先代が”平和になるように”と願って戦後に建てたのだ。

金属の樽がいくつも並べられていたが、どこか温もりを感じる。

貯蔵庫に入ってすぐに近くに置いてあった、2つの木桶が目に入ったからだろうか。

大きな桶は大吟醸、小さな桶は純米酒が仕込まれている。

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全てではありませんが、今代司では毎年木桶を使ってお酒を作っているんです。メンテナンスも自分たちで丁寧に。

釘も接着剤も使用せず、木だけで作られているんです。

なので、1枚外れたらバラバラっと壊れてしまう。メンテナンスができるように職人は修行に出ます。

木桶のメンテナンスは相当大変で、重労働。
環境や気候の変化に敏感で、精巧に作られている桶を扱うには、熟練の技が必要なのだ。

新潟県内にある酒蔵の中でも、毎年木桶を使った酒造りをしているのは、今代司だけ。
木桶を扱える職人は年々減っているという。

今代司のこだわりは、木桶だけではない。
金属の桶も、一枚板で造られている。

この桶の中で仕込まれた酒を、じっくりと時間をかけて寝かす。

アルコール添加を一切しない全量純米仕込みを採用し、1種類をのぞくほぼ全てのお酒が新潟県産の酒造好適米を使っているのだ。

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木桶の制作費用はクラウドファンディングで集めた。

今代司の魅力に惹かれた全国のファンが、次世代に酒と絆を繋いでいる。

全国の新潟出身者に届ける想い

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酒蔵を見学していくうちに、スーパーの日本酒コーナーで新潟の新聞紙で包まれた日本酒を見つけたことを、ふと思い出す。

特別目立ったニュースは見受けられなかったけれど、パッケージに惹かれて購入したのだ。

キリッとした味わいの中に深みと柔らかさがあり、お米の香りをふわっと感じられる。非常に印象的なお酒だったのを思い出した。

今代司でも、同じように新聞紙に包まれたお酒が販売されていた。思わず案内をしてくださった女性に理由を聞いてみる。

あれは、新聞酒(しんぶんしゅ)です。日本酒は光に弱いお酒なので、守る意味もあるんですけど、それだけじゃないんですよ。

新潟になかなか帰ってこれない人たちのために、あえて新潟の地方紙にくるんで出荷します。

お酒を飲みながら地元に想いを馳せて、”頑張ってほしい”っていうエールを送っているんです。

感動した。
言葉にならなかった。

新潟県に縁もゆかりもない私ですら、思わず手にとって購入してしまうのだ。

ふるさとの親しみのある新聞紙を見た人達は、もっと感じる熱い想いがあるだろう。

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今代司では、販売しているラベルにも工夫を施している。

錦鯉の模様や木の年輪の一部が、新潟県の形をデザインしているのだ。

スタイリッシュさや遊び心を入れながらも、ふるさとを想う人々を繋ぐ…。

小さな酒蔵がつくりだすお酒は、温もりで満ち溢れていた。

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”むすぶ”お酒をつくる

大きな地震に何度も襲われたものの、びくともしない酒蔵。

時を経て、明治から令和まで作られてきた酒を伝える。

そして人と人を”むすぶ”。

これからもずっとむすび続け、そして未来へ繋いでいくのだろう。

【新潟】今代司アクセス

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住所:新潟県新潟市中央区鏡が岡1-1
TEL:025 245 3231
営業時間:9:00〜17:00(営業時間短縮の可能性あり)
定休日:年中無休
URL:http://imayotsukasa.co.jp
※酒蔵見学は予約不要。英語ツアーもあり(8名以上は要予約)

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