見出し画像

去りぎわの贈りもの

画像1

空気の中にまだ少しだけ残っている夏が、
「やり残したことがあるなら、待っててあげるから今やりな!」
と言っているような夜だった。

9月も終わりに差し掛かったある日、家の前で、おかしなメンバーで手持ち花火をした。私と、両親と、中学生の姪とその友だち。

あまりにもイレギュラーなメンバーで唐突に始まった。しかもこうやって花火をするのは5年ぶり以上だったのではないか。

私はこのちょうど1週間前、全然違う場所である人からやりたいことを聞かれ、「花火大会に行きたい」と答えていたので、やり始めてからそれを思い出したときには1人で笑ってしまった。

ちょっと望んだ形とは違ったけれど、今回はこういう形で叶うのか。
でも、久しぶりの手持ち花火はなんだかわくわくした。

着火用のろうそくに灯された火がちらちら揺れるのを見ていると、不思議な落ち着きとほんの少しの緊張感が同時にやってくる。

花火に火が点き、勢いよく炎が噴き出す瞬間の音と閃光は、夏にしか味わえない特別な懐かしさと高揚感を連れてくる。

その時の私たちは、それぞれが日常のいろいろを抱えていたけれど、それは束の間のとても平和な時間だった。

火薬の匂いが、確かに今年も夏を過ごしたことを胸に焼き付け、夜に消えていく。

夏、待っててくれてありがとう。

#日記  #エッセイ #夏 #花火

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?