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読書記録26 『漱石と「資本論」』

小島秀俊、山崎耕一郎
『漱石と「資本論」』(祥伝社新書 2017年)



引き続き資本論に関する本を読み進める。
この本は、漱石の話ももちろん書いてあるが第二章の資本論の大意・要約を読むだけでも意味があったのではないかと思っている。

偏見。これはよくわからない、自分自身で判断できる材料をもちあわせていないからであるが「資本論」にかかわる内容の本は左に偏らざるを得ないのではないか。と思っているし、思っていた。

しかしながら、第三章では資本論、マルクスに疎い私にも分かりやすく資本論への批判と疑問を明確にまとめてくれている。(特に、今を生きているからこそ、カンタンに理解できることがあり、マルクスにもモノを申せる。一般人でも考えることができるのだという論点は中立的で、なるほどど思う。過去の人が想像もし得ない時代に私たちは生きているのだから…当然だ。)

やはり、苦しい。
新書で一般向けに書いてあっても、苦しい。
資本論はわかりにくい。(もっともっと原書はくどい!!らしい)

そのなかで最も面白かったところが、漱石は資本論を理解できていなかったという部分だ。

日本人的思考=具体的、帰納的。
欧米人的思考=抽象的、演繹的。

そして、教育も実学に重きを置いてきた流れがある日本と教育の頂点に哲学をおく欧米。それは、今にもつながっているという。(一般的に日本人は、数理系の力はよいが抽象力は劣っているというデータがある。)

天才、文豪の漱石も日本人的思考だった。
一気に親近感を覚える。
資本論が漱石の書棚にあった。
「ちょっとわかりづらかったなー。うーん…。あとでじっくり読むかな」なんていう積読だったのかなと想像もする。ここも親近感だ笑

漱石は選挙で社会主義者との連携による応援や、作品にも共鳴がみえるようだ。これは、今の小説にコロナやSNSを題材として無視できないように物語を生き生きと描くためのものではなかったのかな…。ある程度の共鳴はしつつも、活動家なんて視界にも入らず漱石の本業は文筆家だったんだろう。

読んでみれば、興味深いところも多いし面白い本でした。時代がかわって、見方や距離をとっているからこそ新しく参考になることもある。資本論だけではないが、読み方や別の切り口で…といった理解の仕方が必要というか無駄ではないような気がします。

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