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「バナナケーキの幸福」読了

「バナナケーキの幸福 アカナナ洋菓子店のほろ苦レシピ」
山口恵以子著(PHP文芸文庫)

この本は、一言で言うと「可愛らしい」本だ。まず、表紙のバナナケーキが可愛らしい。そして、ページをめくると「茜さんと七さん」という、可愛らしい親子がパウンドケーキを焼く。

突然旦那さんに離婚を言い渡された茜さんが、持ち前のパウンドケーキ作りの技術をもとにケーキの卸売りをする所から話は始まるが、決してドラマチックな描き方はしていない。
むしろ、しっかり者の七さんや、やさしい周りの人達に囲まれて、ハートフルな物語だ。

私がこの物語で一番気に入ったのは、パウンドケーキたちの描かれ方だったりする。
彼女たちにとって、パウンドケーキは商品なのだけど、「売上至上主義」ではなく、生み出したケーキたちに心が宿っている感じがする。
物語が進むにつれて、商品にはプリンやタルトが加わるが、やはり物語の核はパウンドケーキなのだと思う。

私はお菓子作りをほとんどしないので、こういった「可愛らしい作品」に華を添えるようなお菓子は、なかなか考えつかない。
しかし、「こんな小説を書いてみたいな」と感じさせる物語だった。

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