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「花桃実桃」読了

「花桃実桃」中島京子著
(中公文庫)

この本も、表紙と表題が可愛くて買ってしまった一冊。

主人公の茜は私と同じ四十三歳。会社をリストラされて、実父から相続したアパートを住み込みで管理する。
アパートの住人には、泣きのウクレレ弾きがいたり、整形手術を繰り返す人がいたかと思えば、実父の愛人までいる。果ては仲良しなお化け夫妻まで。
そんな個性豊かな住人と共生しながら、アパートの大家さんとして新しい生活を始める、そんな話だ。

私は既婚者だけど、この茜さんの紆余曲折がわかる気がする。
というのも、専業主婦として一見淡々と生きているようで、実際は個性豊かな仲間たちと緩く穏やかな関わりがあるからだ。時には「ファン一号」だったり、また時には「支部長」だったりしながら生きている。
もちろん、無名人としての私も健在だ。

人生、何があるかは分からない。

「酒も人生も、馬鹿みたいに甘くはないのだから」という一文で物語は締められているが、本当にその通りだと思う。
その、「馬鹿みたいに甘くはない」人生を四十三年生きてきて、それでもやはり楽しい事は苦しい事と同等にある。そんな人生を、あともう半分、今いる仲間たちや家族と共い、泣き笑いしながら歩んでいきたい。

ユーモラスな作品だったが、色々考えさせられた作品でもあった。

あ、ちなみに、この著者は私の卒業した大学(勉強の方)の先輩でした。私は現文でこの方は文理だから、あまり関係ないかもですが、一応。


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