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【エッセイ】 ガス屋さんと道路工事

実は……、普段はプロパンガスを運ぶおじさんです。
※noteでガス屋さんの事を伏せていこうと思ったのですが、1記事30ビュー程度のインフルエンサーなので、別にいいやとなりました。
今後から、このnoteに仕事のグチをガンガン書きます。


おとつい、お客様の家の前で道路工事がありました。
どうやってもここを通らないと辿り着けない。
「ここ踏んでもいいっすか?」
交通整備のおっちゃんに聞いたら、「大丈夫」と答えてくれた。
できたやホヤホヤのアスファルトの上をズンズンと歩く。

ジュ―…。

鉄板に乗せたハンバーグのような音がする。
足の裏をアスファルトから離すと、ネバァーとなる粘着感がある。

ジュ―…ネバァー…ジュ―ネバァー…。

20歩ぐらい歩いて、なんとか目的地の普通のアスファルトに辿り着いた。
振り返ってみると、僕の足跡がくっきりと残っていて、ちょっと煙も出ている。

「全然ダメじゃないっすかぁ!」

向こう岸の交通整備のおっちゃんに聞くと、「おかしいなぁ…」とぼやいていた。

たぶん、ヒョコヒョコとアスファルトの上を歩けば問題はなかったのだと思う。
だけど55キロのガスボンベを担いで歩いでたので、ズッシリと踏み込んでしまったのが、原因だと思う。
自分の体重と合わせると、120キロ以上になるもんな。


普通のアスファルトを歩き始めたら、地面に着いた時に違和感があった。
どうやら、安全靴の底が減っているらしい。
そりゃそうだ、あんだけジュージューと焼いたのだから。
素足で踏んでいるのと同じ感覚になってしまった。
結構、この安全靴が高かったのでショック。
「ごめんね……」
真っ黒に日焼けした、前歯が2本ない笑顔で謝ってくれた。
その笑顔が可愛かったので、「大丈夫っす、ははは」と返した。
帰りは、足の裏に板を巻いてもらい、脱出した。


これ書いてて思いだした!
10年以上前に、道路工事をしていて大きな穴があり、同じように向こう岸に行けなかった時に板を引いてくれた。
長さ3メートル幅60cmくらい。
脚立ぐらいの大きさの板。

菅原文太みたいな親方が「ほれっ、行った行った!」とせっついてくる。
けど、穴っぽ子の深さは4メートルくらいある。
もう一回言う、板の幅は60cm。
綱渡りって言うほどではないが、結構なアバンギャルドなミッション。


工事のおっちゃんたちが作業の手を止めてこっちを見ているので、仕方なく渡る。
片足を乗せたとき、頭の中でドラムロールが鳴りはじめた。
空中ブランコのような緊張感。

ドムドムドムドムドムドムドム……。
(ドラムロールの音の言語化ってこれであってる?)


一歩ずつ進むたびに、みんなが固唾を飲んでいるのが分かる。
穴の下にいるおじさんと目が合う。
ガスボンベを落っことしたら怪我をさせてしまう。

大丈夫、いつも通りにやればいいのさ、俺はプロ!

そう何度も言い聞かせて、穴っぽこを渡り切った。
道路工事の現場から拍手喝さいをもらった。
「スゴイデスネェ」
イラン人ぽい人から片言で褒められた。
ちょっと嬉しかった。

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