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時代は何もかも変えてゆく

休日。
夜中、通っていた小学校の周りを散歩した。

15年も前。
かつて、僕が通っていた学校の周りは田んぼだった。

ただただどこまでも続く、だだっ広い田んぼ道。
汚いけど、たくさん生き物がいた小さな川。
木苺が沢山実る木。
よく友達と立ちションをした草むら。

大昔を生きてきた人たちに比べれば、何を若造が!
と思うかもしれないが、僕から言わせれば田舎道だ。

15年経ち、景色は変わった。
川は埋め立てられて、大きな道路に。
米や野菜が実っていた畑の上には、病院。

レンコン畑と牛舎のあった農家はドラッグストアに。
老人のホームの隣、手付かずで生い茂る林。
その奥には、墓跡。

学校の課外授業でよくレンコン掘りをさせてもらった
農家のおじさんのお墓だろうか。
立ち入り禁止の立て看板があって、中に入ることは
できなかったが、きっとそうなのだろう。

時代は変わる。
景色も変わる。

時代は変われど、人は変わらない。
いつか、誰かはそう言った。

本当にそうだろうか。
僕は変わっていった人を沢山見た。

毎日死にたいと言うようになった人。
金にがめつくなった人。
暴力でしか愛情を示せなくなった人。

人など、時代の前にはなす術なく変わっていくのだ。

1日、1週間、1ヶ月、1年。
時代はものすごいスピードで駆け抜けていく。
そして、何もかもを変えていく。
全ては過去になって目の前から消え去ってゆく。

そんな中で、きっと変わらないもの。
それは、まぶたの裏、頭の中、写真の中、そこに
浮かぶ景色や人々だけなのだろう。

なぁ、思い出よ、記憶よ。
どうか、時代に流されないでおくれ。
あの日の僕を、今の僕を、独りにしないでおくれ。

空っぽの人間にならないために。
空っぽの人間のまま、いつか訪れる死を迎えぬために。


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