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日記 鍬を見る

二月三日
晴れのち雨

 朝起きると、ビッグヒストリーの研究者である辻村伸雄さんに『つち式』を紹介していただいていた。

 なによりうれしかったのは、製作陣の一人である豊川聡士へお褒めの言葉をいただいたことだ。
 つち式の主宰はわたしだが、わたし一人で作ったわけではない。豊川には「棚田全段流し素麺」の記事を書いてもらったし、編集段階でもなにかと相談にのってもらった。制作メンバーが褒められるのは、自分のことのようにうれしい。
(他に、デザインを西田有輝、編集を石躍凌摩、マネジメントを間宮尊が、それぞれ担当してくれている。豊川のブログは以下。)

 きょうは、昼から某私設図書館での読書会に行く予定だったから、午前中だけ野良仕事をした。

 きのうの日記にも書いたが、現在、休耕田を一枚再稼働させるべく整備している。
 諸々やるべきことがあるのだが、まずは法面側に溝を作る。理由は二つあって、一つは法面の落ちこんだ土を戻すため、もう一つは排水を容易にするためだ(*1)。土を積む際は、崩れないよう草の生えた塊を外側に置く。
 きょうのわざをなしおえて鍬を洗うと、なぜかひときわ美しく見え、しばらくまじまじと見つめていた(タイトル上部の写真はそのとき撮ったもの)。

 作業をしていると、ごく小さいバッタを発見した(写真中央)。春待つ身にはこれだけのことがうれしい。

 それにしても、毎年毎年めぐりくる季節のうつろいの、なかでも春の来た証拠をひとつひとつ見つけては、毎年毎年あきもせず感嘆し安堵する自分を可笑しくおもうことがある。 ――『つち式 二〇一七』11頁

 あすは立春だと聞く。いよいよだ。

 ニックたちには大豆を炊いてやった(選別で撥ねたもの)。


*1 水田に水があるのはよいことと思われるかもしれないが、ここは水を入れなくてもつねに溜まっているような箇所で、排水したいときにできないのはよろしくない。詳しくはわからないが、そのままでは硫化水素が発生するとかなんとか。「水が腐る」という表現を聴いたこともある。事実、掘ってみると青黒い色をした土で、いかにも不健康である。

#日記 #随想 #エッセイ #つち式 #農耕

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