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年齢を知りたい理由

         (約1,100字)

先日、仕事で失態をおかした彼が、終業後にまた話す機会がありました。
スモーカーの友達と小一時間話をして、
一人で帰るところでした。

私は、仕事で窮地に追い込まれた彼を正直なところ、心配していました。
同情に近い感情でした。

私は自分の家族が気になり急いでいましたが、彼が話したいような様子で手を挙げたため、立ち話に付き合うことにしました。

途中、何度か年齢を聞かれました。
その度に、はぐらかしました。
別の仕事を探していること、暮らしている家の家賃や環境などを聞きました。

また時間をおいて、年齢を聞かれました。

「とし、そんなに変わらないですよね」

「いや、私、ぜんぜん上だよ」
と答えると、

「えー、じゃあ、奢ってくださいよ」

なにそれ、と心の中で呟きました。

携帯電話を胸のところに持っていて、時々、目を落としていたので、連絡先を交換するつもりのようでしたが、そこはスルーしました。

「年上だから、私が奢るの?」

「生活、大変じゃないですか。一人暮らししてると。結婚して別れて、一人なんですか。
自分は家賃が安くても、ここまで通う電車代が18,000円かかるんです。電車代を含めると(ちび蔵)さんが払う家賃と、変わらないんですよ」
と、質問込みで、澱みなく言われました。

本気で年齢が同じくらいと思っていたようでした。というのも、会って間もないときから、ずっとタメ口でした。

「この辺だと、職場の帰る人がくるから、他で話しませんか」

そう言われても、

「年上だから、奢ってほしい」

と当たり前に発言する彼と話す気が失せてしまいました。

「ごめんね、今日は家族が家に来るかもしれないから、もう帰らないと」

仕方なく話を切り上げました。

一人暮らしをする生活の大変さは痛いほど分かり同情しますが、心配をして親身になるのもほどほどにしないといけないのかな、と思いました。

母から言われたことは、外れてはいないかもしれない。

『自分が思うほど相手は思ってはいないことが多いし、相手が思っていても自分がそれを受け止める覚悟ができていないときがある』

昔、付き合っていた人から言われたことを思い出していました。

「自分(相手)のことを好きなんじゃなくて、結婚がしたいだけなんでしょう」

私はそのときに、添い遂げたいと思うほどは好きじゃないのに付き合っていました。
周りから結婚しないといけない空気を感じていたからです。

そうじゃないと思おうと自分に言い聞かせて交際を続け、気持ちを受け入れられずに別れました。

県内ではあっても、離れた家に暮らしていた彼の時間もお金も使わせてしまいました。

誰かを大切に思うことと同時に、
自分を律することも必要だと思い知った苦い思い出のひとつです。





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