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無知であったから好かれたけど、冷静に考えたら隠れたいほど恥ずかしいこと

                                         (約1,500字)
最近、見た目と中身についての記事を読むので、最初に就職したときの話を書きました。

短大を出て、誰もが入りたい会社に就職した。
就職氷河期に、私は1社しか受けていない。コネ入社だった。
あろうことか、人気のある華やかな部署に配属されてしまった過去がある。

私は、希望が事務職だったが、イベントを行うところの事務についた。
同期生は8人くらい居た。
その8人で、新入社員の飲み会があった。

私は短大卒で、20歳。
他のほとんどが大学卒だった。
同じ短大卒の女子は、静岡県東部の支社に配属される予定だった。

飲み会でお酒が入り、盛り上がっていたときに報道の仕事に就いていた男子が、ニュースについて話し始めた。
「ふくじょうし」の話しだった。

私はそのとき、全く字面が思い浮かばなかった。試験の単語に出てきた記憶もない。

ニュース番組で、し、が付くのは、多分「死」だろう。ふくじょう、って何だ?
話しの流れから、男性と女性が出てきた。ホテルで、男の人が死んだ、という状況だけは分かった。警察が入って、しかも一人が既婚者だったために、厄介な状況だったらしい。

初めて顔を合わす支社配属の社員もいる中、

「分からないんだけど、ふくじょう死って、何ですか」
と勇気を出して、質問した。

みんながビックリした顔で一斉に私を見た。

「え、(チビ蔵)さん、分からないの!?」

「この中で、説明出来ない人、手を挙げて」
と他の人が言い出した。

これはマズイ、常識なんだ‥‥
とっさに思ったら、短大卒の東部の支社に勤める予定の女子が周りを伺いながら、ゆっくり手を挙げた。すごく可愛らしい小柄で話しやすい子だった。
結局、その日は教えてもらえなかった。

ーいいよ、帰ってから調べようー
と彼女は、小声で言ってくれた。

腹を抱えて笑い死ぬこと、かと想像した。
キノコ類に「ワライダケ」という植物もある。

辞書で調べたら、「腹上死」だった。
顔から火が出るくらい恥ずかしかった。

それから半年後に、取引き先のイベント会社の方々から食事に誘われた。
仕事で何回か会って、話が楽しくできる男性がいた。

休みの日に、その男性宅でのBBQ会にも呼ばれた。
楽しみに出かけて行き、車で数人と現地に行くと、見知らぬ女性が、白くて小さな家に招き入れてくれた。

顔の造作がぎこちない女性だった。

すると、その女性に似た女の子がお父さんを呼んだ。
話しやすい、好きになりかけていた男性が、ニコニコしながら出てきた。

「結婚‥‥してたんですか?」
と同じ会社の人に聞いた。

「そうだよ、知らなかった?
仕事のときは指輪してない人だからねぇ」
と、あっさり言われた。

「◯⬜︎さんの奥さん、ビックリしました」
と言うと、
「あっちが良かったんじゃないの」
と、他の男性が笑いながら答えた。

ヘッダー画像のようなお顔立ちの男性だった。
奥さんがいたことが悔しいと思ったんじゃなくて、奥さんの顔立ちがあんまりだったのが悔しかった。

女子って、そういう生き物なんだなぁ。

人のことは よく見える。

私は第一印象で、あまり嫌われることがない。でも、中身を偏差値に評価されて、胸にゼッケン(ビブス、ナンバリング)を貼ってあったら、確実に嫌われてしまう。

心は、見えない方が平和である。

ちなみに、最初の飲み会で「ふくじょう死」を一緒に分からないと言って手を挙げた彼女は、一年で寿退社し、翌年にお母さんになった。

結局、意味を分からなかったのは、私だけだったのだ。

ただ、あまりの世間知らずが露呈して、一緒に飲んでいた同期の一人が、私を心配してくれるようになった。

私は数年後に、その人を好きになった。




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