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通勤電車の憂鬱を和らげてくれる(ほんのはなし11)

朝、ホームで電車を待つ。私が乗るのは都下に向かう電車。反対ホームにやってくる電車はいつも混雑している。反対方面よりは空いているけど、それでも途中からどんどこ乗ってくる。乗り換え駅に到着。乗り換える電車は階段の下。ホームには階段が一か所しかないたから、電車の到着が重なると階段を上がる人と下りる人ですごいことになる。そして三か所しかない自動改札。ピンポーンと鳴って閉まるとなかなか開かない。私もタッチし損ねて閉まらせてしまったことがある。この申し訳なさ。

乗り換える電車も混みこみ。扉が開いて降りてくる人の足元を見る。まだかまだかというくらい人が降りてくる。そしてこれでもか、と人が乗り込む。あぁ、ストレス・・・。そういえば、通勤時間が短い人の方が幸福度が高いと何かの記事で読んだことがある。

そんな通勤時間の憂鬱を和らげてくれるのが上橋菜穂子さんだ。以前にも書いたけど、本当にどんどんのめり込んで次はどーなる!?と惹きつけられるのだ。

『精霊の守り人シリーズ』は女用心棒のバルサが主人公。小さい時、陰謀に巻き込まれて父親を殺され、父の親友に助けられて一緒に旅暮らしをする。

ファンタジーが苦手な人にもぜひぜひ、読んで頂きたい。

解説の幸村 誠さんも上橋作品の魅力の一つに「架空世界における日常生活の描写力の見事さ」と書いている。ここではないけれど、実際に存在しているようなリアルが伝わってくるのだ。その場の光の差し込み方や食べ物の焼き具合、におい、がとてもリアルに描写されていて、そこにいる人の動きで温度や感情も伝わってきて、目の前で映像を観ているように感じられる。

「料理人が炙っている肉から脂が滴ると、ジュッと音をたてて熾の上に小さな泡がはじけ、香ばしい匂いが漂う」

「日が昇り、日が沈む、太陽が統べる世界をあらわしたこの広間を、いま、日没間近の静けさが支配していた」

読んでいると突然ぐん、と波がきて、心拍数が上がるような話の展開に遭遇する。またそこでどんどんのめり込んでいく。戦い方や相手へのダメージの与え方、怪我の対処法など、話の中に色々な知識が入っていて、すごく考えて作られているのがわかる。

そして上橋さんの作品は登場人物それぞれに偏らず、一人ひとりの置かれている立場や考えがしっかり描かれている。そうか、そっちはそういう理由があるのだな、と気づけたりする。

領土の取り合いの話も出てくる。戦術も書かれていて、ロシアとウクライナもこうやって作戦を立てて戦っているのだなと、ちょうど今現実に起こっていることが本当にリアルに感じられた。大河を観ていても思うけど、いつの時代も同じようなことが起こっている。それぞれの立場で思うところが違うから難しいけど、どうにか犠牲なく解決出来たらいいのに。


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