「夜遊びは、終電がなくなってからが、楽しいんだよ。」
昨日は久しぶりに、バーでタバコを吸った。
1mgを1本だけ。
年下の親友からの、もらいタバコ。
手放して3年くらい経つけど、
タバコを吸っている友達と飲んでいると、
ちょっと1本、もらっちゃおうかなってなる。
タバコデビューは遅かった。社会人2年生くらい。
人生でタバコを吸うことは絶対ないだろうと思っていたのに、
調子に乗って、イキってたんだろうな。
キツイのは嫌だしビビりだから、ずっと1mgのメンソール。
会社では、気分転換に吸うくらい。
残業泥棒は嫌だったから、長時間席を外すことはなかったけど、
真剣に仕事の相談をするのは、意外と喫煙所だったかもしれない。
あまり関わりのないチームの人とも、喫煙所で仲良くなったりした。
ひょんなことから、20代の後半で、馴染みのバーや飲み屋が出来た。
飲み会みたいに、事前に会う日会う場所を決めるんじゃなくて。
ふらっとお店に行って、その日いる常連さんと話して飲むのが、
自由気ままな感じがして、好きだった。
出身地も、年齢も、学校も、会社も、全然違う常連さんたちから、
たくさん刺激をもらったし、今でも仲良くしてもらっている。
終電で帰るのが名残惜しくて、タクシー帰りを始めたのも、この頃からだ。
タバコの味は今もよく分からないけど、
常連さんたちと一緒に吸うタバコは、きっとおいしかったと思う。
特に仲良くしてくれたお姉さんは、
美人で、仕事が出来て、お酒が大好きな、ヘビースモーカーだった。
一緒に酔っ払ってぐでんぐでんになったり、
お誕生日にプレゼントを送りあったり、
人生の先輩ならではの話もあったり、
私のしょうもない恋愛に、真剣に喝を入れてくれたりした。
「夜遊びは、終電がなくなってからが、楽しいんだよ。」
タバコを吸っていて、ふとお姉さんがくれた言葉を思い出した。
まるで悪魔の誘いである。
でも、終電がなくなってしまったら、
あとはもう、タクシーが家の前まで送ってくれる訳だし、
もう一杯くらい飲んじゃっていいよね、
もう一本タバコ吸ってもいいよね、ってなる。
※タクシー会社にも、大分投資したと思う。それはしょうがない。
ちょっとだけ悪いことをしているみたいで、
それを仲の良い常連さんと共有することが、楽しかったんだと思う。
そんなお姉さんは、別のお店で出会った素敵な旦那さんと結婚し、
子供が生まれ、タバコはすっかり卒業した。
お酒はそろそろ飲めるそうなので、今度飲みに誘おうと思う。
そんな私は、お姉さんの開いてくれた合コンを発端に、
今の旦那さんと出会うことになる。
飲みの場は好きだけど、実はお酒は強くない。
そんな私にタバコをくれた年下の親友は、
一緒に行ったパワースポットの神社参拝を発端に、
大安の今日、入籍する。
その神社を勧めてくれたのは、お姉さんだ。
終電の時間は、一応調べていたんだけど、
やっぱり、タクシーで帰ってきてしまった。
コンビニに寄って、人生で最後の一箱、タバコを買おうか迷ったけど、
理性がちゃんと仕事をした。
でも、ちょっとだけ、どうしようかなって。
明日、ピンクのメンソールの番号を探してしまいそうな、自分がいる。
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