続・描くようになったきっかけ

#描くようになったきっかけ コンテストに応募した作品(下記)の続きです。

↓こんな感じで締めくくりました。

別の機会っていつやねん!となるくらい放置してたので、ご説明します。

そもそも、一枚の絵に出会ったのは確かなんですが、その作品と再会する術はもうありません。なぜなら絵のタイトルも画家の名前も忘れてしまって、探しようがないからです。そんなんでよくもまあこんな風に描けたなという話なんですが、それは「絵」自体ではなく、「技法」のおかげだからです。

「混合技法」について端的に言うとすれば「過渡期の技法」です。

そもそも、美術でおなじみの「油絵」が発明されたのは15世紀、その歴史は600年に満たないのです。油彩以前は「フレスコ」や「テンペラ」と言った技法が主流でした。

油彩の技法が普及する過程において、それまで主流であったテンペラが併用されていた時代がありました。その併用された技法を混合技法と呼びます。

乾燥の早いテンペラ絵具で堅牢なデッサンを描き、その上から乾燥の遅い油絵具を何層にも重ねる。これを繰り返すことによって、確かな形態描写と深く豊かな色彩を両立させることができるのです。

混合技法は、性質の異なる複数の画材たちにその役割を遺憾なく発揮させるためのテクニックであり、その「適材適所」を体現したかのようなふるまい、平たく言えば「いいとこ取り」の姿勢は、ひとつの「生き様」を暗示しているとさえ言えます。

やがて油彩は全盛期を迎え、現代に至るまでファインアートのメインストリームであり続けています。しかし、古き画材の特性までも総合的・理知的に見つめて共存させた、混合技法によって描かれた絵画の、あの独特の佇まいを、私は忘れることができません。

たとえ作品そのものを忘れても、その奥に潜む本質こそが、私と美術をつなぐ架け橋なのです。

次の作品への励みになります。