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【選挙ウォッチャー】 参院選2019・秋田県選挙区レポート。

日本全国にいろいろな問題がありますが、秋田県ほど選挙の争点がハッキリしている場所はありません。この参院選の直前、秋田県は大きく揺れに揺れまくっていました。というのも、イージス・アショアを配備するために、いろいろな計算が誤魔化されていて、秋田県にイージス・アショアを配備するべきだという根拠がデタラメだったことが発覚してしまったからです。いろいろと計算した結果、秋田県に置くしかないというから引き受けようとしたけれど、最初からデタラメだったのですから、秋田県の人たちが怒るのは当然です。そして、その不満は見事に選挙の結果に反映されました。

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中泉 松司 40 現 自民公認・公明推薦
寺田 静  44 新 無所属
石岡 隆治 45 新 NHKから国民を守る党

ガッツリと組織で戦う自民党の中泉松司さんに対し、寺田静さんは「野党共闘」の候補でもなく、完全無所属の候補として、どこかの政党から支援を受けるわけではなく、ただ愚直に政策を訴えるスタイルで戦っていたのが印象的です。寺田静さんの夫は、民主党系の衆議院議員の寺田学さんです。それなりに支援者がいる人であるとはいえ、巨大な自民党と戦うのは大変なことです。それでも寺田静さんや陣営が訴えていたことは、イージス・アショアのことでした。


■ 秋田の中心地に配備されるイージス・アショア

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候補となる全国20か所を調査した結果、適する場所が見つからず、唯一、イージス・アショアの配備に適していた場所が秋田市だった。当初はそう説明されていたので、受け入れたいとは思わないけれど、仕方がないから受け入れるしかないと思っていました。ところが、あとでその根拠となった計算がデタラメだったことが発覚し、説明を求めたところ、担当者が説明会の真っ最中に居眠りをぶっこく始末。根拠がデタラメだった時点で怒り心頭なのに、間違いを指摘されての説明会で居眠りをこいてしまうのですから、真摯に対応してくれているとは思えない。だいたいイージス・アショアができれば、戦争になった時に真っ先に攻撃対象となるのは明らか。イージス・アショアが配備されようとしている秋田市の新屋演習場は、秋田市の市街地にあって、県庁街や商店街など、秋田市内で最も栄えている場所から数キロしか離れていないのです。東京で言うなら新宿にイージス・アショアを配備しようと言っているようなもので、田舎はたくさんあるのに、よりによって秋田市の中心地とも言える演習場にイージス・アショアを配備すると言っているのですから、どう考えても頭がおかしいのです。

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こうやって写真で見ると、フェンスの向こう側が駐屯地になっているので、ものすごい田舎にあるようなイメージがあるかもしれないのですが、この駐屯地のすぐ隣は「こまちスタジアム」という秋田市で一番大きな野球場があり、その横には武道館があって、すぐ目の前にあるのはゴルフ場です。

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原発で言うなら六ヶ所村みたいな何もない所にイージス・アショアが配備されると思ったのですが、意外にも秋田で一番栄えたところのすぐ近くに配備されるもので、現場に行ってみれば分かるのですが、万が一の時には秋田が再起不能になるぐらいの中心地に配備するなんて、狂っているにも程があります。ましてや、イージス・アショアはミサイルを撃ち落とすための陸の戦艦です。ミサイルを撃ち落とすためにはバリバリにレーダーを出して、ミサイルの正確な位置を把握しなければならないわけですが、詳しい人に言わせれば、電子レンジをむき出しにしているようなものだといい、周辺に及ぶ電磁波の影響などは計算されていません。

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あんまり電磁波が危ないなんてことを言うと、電波野郎だと思われてしまうのですが、海の真ん中だったら何の影響もないんでしょうけど、秋田の中心地に配備するというのですから、人体への影響がないと言い切るための評価みたいなことも遅れています。もっとも、人体に影響があるとなったら配備できなくなってしまうので、あっても恒例の「大丈夫大丈夫作戦」になってしまうのでしょうけど。秋田市内では「我々が受け入れるしかない」と思っていた人たちも、あまりにデタラメな対応が続いているので、イージス・アショアに対する反対熱がかなり高まっています。なので、次々と自民党の主要議員たちが応援に駆けつけても、それが逆効果になるというのはよくわかる話です。

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今回の参院選の結果を受け、イージス・アショアには自民党の議員たちが危機感を覚え、「秋田はもう納得が得られない」として撤回するように働きかけるようになりました。中泉松司さんのように選挙で落ちたらシャレにならないので、秋田県知事も、地元の自民党議員も「もう秋田でイージス・アショアは無理だから!」と言っているので、とうとう2019年12月には政府が見直す方針を発表しました。沖縄では地元民がどれだけ反発してもゴリゴリに進められるのに、秋田では自民党議員が「無理」と言っているため、あっさり引き下がるのです。これは一つの参考になろうかと思います。

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地元の自民党議員が「そんなことしたら俺たちが勝てなくなる!」と言い出し始めたら、計画はあっさりと覆るのです。沖縄はなんだかんだ言って、自民党の議員が全然勝てる環境にありますし、実際、小選挙区で落選しても比例復活できるぐらいに余裕なのです。これは九州で自民党が強いということも影響しているので、沖縄としては不幸な面もあるのですが、自民党議員がろくすっぽ勝てなくなってくると、状況は大きく変わります。やはり日本を動かしているのは、良くも悪くも自民党なので、自民党の議員にきっちり物を申せる環境があることが何より大事なのだと思います。


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