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Marriage Storyの感想文

Marriage Story
2019年のNetflixオリジナル映画

とてもいい作品だった。
ちゃんとした映画って、元気がない時には見れないのは私だけ?

軽いものばかり見ていた数年。
最近は英語の勉強も兼ねてSelling sunsetとかEmily in Parisとかくだらない(失礼)ものばかり見ていた。
こういう映画を見たいと思えたってことは、元気が出てきたってことかもしれない!

久しぶりに役者の演技に痺れ、終わった後も咀嚼し続ける作品だった。

女優のニコールと舞台演出家のチャーリーが結婚生活に葛藤を抱えて、離婚に向かう姿を描いたもの。
LAハリウッドの新進女優だったニコールは、自ら選んでNYでのチャーリーと劇団の仕事を選んだはずだった。しかし結婚して子どもが生まれ、月日が経って彼女に残ったのは「自分は夫の成功に寄与した。けれど、自分自身の人生は?」という想い。
結婚生活がうまくいかなくなり、子どものためにも円満な協議離婚を望んでいた2人だったが、これまで積み重なった澱が表面化して、結局弁護士をたてて疲弊する泥沼の争いに。

めちゃくちゃリアル。めちゃくちゃ共感。
これは、離婚の話を通して描く、結婚のお話。

主役2人が素晴らしい!
特にスカヨハの複雑な思いを時系列関係なく絞り出すように言語化するところ、爆発する感情を必死に抑制するところの演技がもう素晴らしい。2人の長尺の口論圧巻だった。
あまりにブラックウィドウの演技のイメージが強すぎて忘れていましたわ、、、

他人と生活することは、他人が皮膚に染み込んでいくということだと思う。
経年と共に染み込んで、私を侵食し、いざ剥がしてみようと思うと既にそれは私と一体となってしまっていて、簡単に分離できなくなっていて、それを剥がすには毛をむしり取るほどの痛みが伴うんだ。

特に、生活全般にさしてこだわりが無い者と、確固たる自分を持ち合わせた者が同居するとなると、どうしたって後者が前者を侵食することになる。
(比較的包容力がある者と、ない者という言い換えもできるかもしれない)

かくいう私は、結婚して今年で12年になる。
私は生活にそこまでこだわりがなく(というか、こだわりを持つほどの知性がない)、また、それに対する情熱も特にない人間だ。
夫は、柔軟剤はこれがいいとか、洗濯物を干す向きとか、食器棚の中の皿の配置とか、私が気にも留めない何かに言及してくることが多い。
なんなら結婚当初、彼は段ボール40箱分ほどのガラクタを含む大量の荷物と一緒に新居に移ってきたせいで(私は段ボール7箱だった)、私は夫のモノに囲まれて生活することになってしまった。
夫が独身時代から使っている切れ味がすこぶる悪い大根すりおろし器とか、ぶきっちょに大きい無印良品の鍋とか、こだわりもないし壊れていないからなんとなく買い替えられず、全然私の好みではないものに囲まれて毎日料理を作っている。
けれど、私の気分は、別に平気だ。

ただ、そういうものに囲まれて生きていると。
元々希薄な「自分のやり方」、や「自分の希望」なんてものをおろそかにしていると。
おろそかにしながら他人の世話をしてると。
少しずつ少しずつ、自分という輪郭が薄れていくのがわかる。
こだわりのないものが、こだわりのある者の意向を甘受して生活していくと、何が自分の好きか、ぼんやりとわからなくなっていくのだ。

そこに強者と弱者の関係みたいなものがある気がする。

そしてこれは、夫婦だけでなく、同棲しているパートナーや、親子関係にも当てはまるものだと思う。

生活の瑣末な一つ一つだけでなく、人生に影響してくるから、私には、そのことの焦りが漠然とある。
自分のアイデンティティの問題だ!と思う。

結婚生活において、お互いがお互いに同じ分量だけcareを向けている状態は理想だけど、そんなこと達成できてるカップルなんて本当に少ないと思う。
常に不均衡は存在していて、ある時ふとこのままでいいの?と疑問を呈した方が大騒ぎするという構図。この映画のニコールのように

人は当然変化、進化していくから、お互いがお互いに注意を向けていないと互いの変化には気づけない。
ある時相手が変わっちまったと愕然とするけれど、それは日々の変化に目を向けていなかった自分の責任。この映画のチャーリーのように

妻のニコールは夫のチャーリーに、もっと自分をリスペクトして欲しい、そして夫を自分勝手だと罵るが、自分勝手とかそんな次元の問題じゃなくて、多分、「男性と女性」「家庭と仕事」「ニューヨークとロサンゼルス」。
全てがただ違う、ただそれだけ。
ニコールが包容力あるがゆえ、これらの様々な対照的な2つで複合的に揺れ動いている様が、すごく人間らしくて、印象に残った。

自分の聖域を守るということがとても大切なのかな
上手に揺れ動かなくてはいけない。バランス大事だな

結婚というシステムは難しい。
無理があるシステムだなと感じる。
「もう愛していない、なんていう単純な話じゃないの」とニコールがいう姿が、とても印象的だった。

超おすすめ、いい作品。

家族系の映画では、次に見たいのは、
The Son/息子
https://www.theson.jp


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