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読書記録〜私はカーリ、64歳で生まれた〜

記事タイトルは先日読了した本の邦題で、原題は「Nowhere's Child」です。
邦題から内容を想像することはできませんでしたが、本の表紙に掲載されている写真から一瞬読むことを躊躇いました。読了後、自分がいかに無知であったかを痛感すると共に、遅かったとは言え知らなかった歴史の一部を知ることができて良かったと思いました。

この本は「レーベンスボルン」で生まれ、その後養女として育てられた筆者の人生が綴られています。就職を機に自分の出生地を知り、生まれてから養女として引き取られるまでの「空白の暗黒の3年間」を追うことで次々と明らかになる衝撃の事実。苦悩の日々の中、最愛のご主人や息子さんを始め多くの人のサポートの下、希望を忘れない筆者の生き方に感銘を受けました。
また、筆者が乳がんのために片乳房を切除することになりその時の心境を語っている部分では、同じではないにしろ子宮を摘出した時の自分の心境と重なるところもあり涙なしでは読み進められませんでした。

私はこの本を読むまでレーベンスボルンのことを知りませんでした。
ドイツ語を学んでいる私は、レーベンスボルンとはドイツ語で「生命の泉」という意味であることはすぐに理解できましたが、それがどういった意図で生まれたプロジェクトで実際にどのようなことが行われていたかを知ってとても衝撃を受けました。
戦争が終わった後も「傷」は決して消えることはありません。
この本で筆者は戦争やレーベンスボルンのことだけを伝えたいのではないと思います。「差別やいじめ、偏見によって苦しむ人がなくなる世界を実現したい」という想いがあるのではないかと感じました。
「普通」とは何か、「幸せ」とは何かを改めて考えさせられる1冊でした。


本の表紙

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