見出し画像

映画『ペナルティループ』(3/29鑑賞)

繰り返す罰が男たちに生む変化に魅せられる作品だった。
被害者遺族に、加害者への複数回の報復をVRで実現する〈ペナルティループ〉。恋人を殺された主人公はナイフで、拳銃で、加害者の男を何度も殺すが、奇妙な心情や関係が生じる。

憎しみのあまり、何度でも殺してやりたい――それを可能にするシステムだと、最初は思っていました。でも、殺すことって精神的にも肉体的にもエネルギーがいる。ループする以上、殺しても奴はまた現れる。解放されるどころか蓄積していく疲弊に、主人公は報復しない道を選ぼうとするんです。
でも。

システムが、それを許さない。どうであれ報復しなければ進めない。
面白いのが、男二人に奇妙な連帯感、いっそ友情と呼べる親密さが生まれることなんですよ。
被害者遺族と加害者、執行人と死刑囚のはずの彼等に。
「撃つよー!」「どうぞー!」なんて、男子学生が戯れるような軽やかさすらあった。

互いのことを話したり尋ねたり、交流は続いていく。並んで歩く場面では、ずいぶん近寄っていたりする。けれど、線がつねに二人の間にあり、それを決して越えることがないのが印象的だった。
こんな形で出会わなければと思う一方で、こんな形だからこそ成立した関係かもしれないとも思う。

報復のために作られた仮想現実の中で、生身の彼らが紡ぐ関係だけが本物のようにも思える。
ループの果て、彼らの辿り着く先がとても忘れられない。

あまりに大きな悲劇を経験したとき、加害者を罰せたら、大切な人を救えていたらと、繰り返し想像するかもしれない。
それでも生きていかなければならず、過去に踏み止まり続けることはできないだろう。けれど生きていくために、こういう過程を経なければならないこともあるんじゃないか。

繰り返し観たい作品でした。ループするほど感想も変わるかも。


映画『ペナルティループ』予告

この記事が参加している募集

映画感想文