◇雨音のような

“雨音のような文章を紡ぎたい”
……ふと、思うことがあります。かつてはこれが“小説”だったんだけど、いまは“文章”のほうが適切。
でも、“雨音のような”って、どういうものを言うんでしょう。それが自分でもわからない。

雨音とひとくちに言っても、実にさまざまです。
しとしと、やさしく湿らせていくような霧雨もある。
ぽつぽつ、やわらかに地面を打つような小雨もある。
ばたばた、屋根を叩くような大雨もある。
ざばざばと、ノイズにしか聞こえない暴雨も。

もっともイメージに近いと思うのは、ひとりきりの部屋でもくもくと何かしているとき、ふと聞こえてくる雨音です。
どこかでさあさあ鳴っているなと感じるくらいの。すこし、遠い音。
わたしがいるこの空間を、包み込んでいると思うような。守っているような。

けれど、どうしたらそんな文章を書けるのでしょうか。どんな文章が、そのイメージに当てはまるのでしょうか。
雨が降るたびに考えてしまいます。いつか、書けるときがくるのかな。雨音のような文章。