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詩集『イギ』刊行から1年にあたって

短歌から離れていた時期、ぐちゃぐちゃの僕の精神を支えてくれていたのが、詩を書くという行為だった。「ユリイカの新人」も受賞し、生きる目的を取り戻すきっかけとなった。やはり書くことが神さまからの使命であり、呪いであると思えた。その結果として編まれた詩集が『イギ』だ。詩には感謝しかない。

剣道では、相手の喉に切先を向けた「中段の構え」が、攻防のバランスの観点から一般的だ。一方、切先を天に向けた攻撃特化の「上段の構え」もあり、一度は試すべしと上級者に薦める人もいる。その理由は、上段を試して中段と比較することで、中段の構えへの理解が深まるから、というものだという。

僕にとって詩を書くことはそれと似た部分もある。詩を書くという行為を通じて、短歌にしかできないこと/詩にしかできないこと、短歌にはできないこと/詩にはできないこと、そのあたりの境界が鮮明になった。
『イギ』では、短歌で表現できなかったことを表現できた。僕が生きた証であり、苦しんだ証であり、そして研究・実験の結果である『イギ』を御笑覧頂けたなら、大いに書き手冥利に尽きる。

最後に、『千夜曳獏』に続き、様々な我儘に応えて下さった青磁社の永田代表・吉川様、驚きの潜む装幀に練り上げて頂いた濱崎実幸様、特殊な製本に応えて下さった印刷所の皆様、販売に携わって下さっている全ての方々、そして読者のあなたに厚くお礼申し上げる。これからも書いていく。
(現在の特殊装丁は初版限定につきお早めに。青磁社からの直接購入も可です。)

『砂丘律』、『千夜曳獏』と存在の根源的な孤独に向き合いながら短歌を詠み継いできた千種創一が放つ初の詩集。 短歌を素地とした確かな修辞力で現代詩に新たなページを刻む一冊。 中東の難民、テロ、そしてジェンダーなど現代社会が抱える諸問題に真っ向から取り組んだ意欲作。 2021年現代詩「ユリイカの新人」受賞。

青磁社ウェブサイトより

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