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パッセンジャーPASSENGERS(2016)

PASSENGERS(アメリカ/2016)
監督 モルテン・ティルドゥム

時は未来。
スペースコロニーが一般的になり、移住ビジネスが巨額の富を生む世界。
巨大星間宇宙船の中、襲い来る、トラブル――。
というと、運行会社の不正や闇、はたまたAIの凶暴化!?
と思いがちなのですが、そんなことはありません(笑)

冒頭から、幻想的で美しい宇宙船に目を奪われます。
完全自動運行の、動くものはAIやロボットだけ、という宇宙船でたったひとり、120年のはずの眠りから目覚めてしまったとしたら!?

わりとありがちなプロローグなのに、ぐいぐいと惹きつけてくるのは、まず、完璧なSF設定なのに、私服のジャケットを気にしたり、乗船チケットによって食事や客室ランクに大きな格差がある(さらに優待チケットには黒い罠が)、かみあわないサポートAIとのやりとり、多過ぎてかえって使えないヘルプメニュー、という誰もが身近に感じられるリアリティの小ネタがちりばめられているからです。

どれだけ文明が進もうと、科学技術が発展しようと、必ず、想定外のまさかが、しかも時に、一度に重複して起こるもの。
そしてそんなまさかの事態にはAIは太刀打ちできず、最後に物を言うのは、人間の直感と、手動での対応なのです。

運行会社はできる限りのシミュレーションを行い、事故対応マニュアルもきっちり準備、用意された宇宙服も品質は完璧。AI達もフルスペックで働いていました。
それでも、起こるときには起こってしまう絶体絶命の事故。

すべてはこの瞬間のために、
そのための出会いだった――。
そして、人生の本当の幸福とは?
そんなあたたかい余韻を残して、物語は終わっていきます。

重力ロスの中、空中に舞う水の美しさ。
目前に迫る、真っ赤な巨星。
マニュアル通りのアンドロイドの対応が大惨事を引き起こすおかしみ。
生真面目で誠実な仕事人の甲板長。
細かな伏線が回収されていく楽しさ。
見どころはたくさんあります。
(一瞬なのにきちんと演技をしているアンディ・ガルシアにも注目。「地球でたったふたり」の菅原文太さん同様、ワンカットなのに印象的!!)
美しいエンドロールも是非、最後まで御覧ください。

SFでは悪役にされがちなAIですが、楽園追放のAIは、芸術や歌、人間を愛する、とても親しみやすいAIでした。
楽しく歌いながら宇宙を行くAI、という場面はとても印象的。
人情と人間味のあるAIが登場する作品を、これからも楽しみにしています。

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