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サラエボ【ボスニア・ヘルツェゴビナ】で戦争ホステルに泊まってみた

【前回まで】
一人旅5ヶ月目にしてついに帰国のタイミングが迫っている柴田。ブラチ島に戻って海の日焼け生活と島の香りを吸い込んでお別れしてきた。ザグレブの濃い霧の中またバスに乗り今度はボスニアに移動してきたけど、このあたりでの戦争のこともなんにも、ろくに知らなかった。



寒い!!

ボスニアに着いた日、天気も悪くて昨日まで泳いでいたとは思えない凍て付く寒さに驚いた。

島でのイカ釣りの時に借りた黒くて大きい船乗りのようなジャケットをそのまま借りてきたからまだ助かったけど、首までチャックしめていてもまだ寒いほどに気温が低い。

相変わらず前情報もなくふらりといろんな国に入っているのでとりあえずブラブラしだしたけど
歩くところ全てがなんだかどんより黒ずんでいる。天気のせいなんだろうか?

到着したその日の宿も廃墟感がすごくて、夜に着いたから本気で怖かった。階段をあがっていくときライト付きでビデオを撮りながらヒーヒー言った。

でも入ってみたら部屋の中はリノベされててわりと綺麗だし、ホストの2人とその友達っぽい人と韓国人のお客さんが皆でリビングに集まって
テレビ観たりパイを食べたりしていてアットホームな明るい雰囲気。

私もアップルパイとラキア(このあたりどこでも定番のお酒)を貰ってそこでくつろいで、そのホストのボスニア人には翌朝もローカルなSIMカードを買うのに付き合ってもらった。

ザグレブでラスト10日間のための10日全ヨーロッパ使い放題SIMを買ってもうスタートさせてきたというのに、モンテネグロの時同様やはり国境を越えた途端に使えない。

あーもう、毎度騙されるわ、と話していたら

「いやヨーロッパで全部使えると言ったなら嘘じゃないかも。ここはヨーロッパじゃないから」と。

え、ボスニアってヨーロッパじゃないの?!

そんなことすら知らずに私ったら……いや、え?

ヨーロッパではあるんじゃないか??

東ヨーロッパの国、とwikiでもなんでも出てくるし、「ヨーロッパの国一覧」とかを見てもボスニアは入ってる。

どうゆうこと??


シェンゲンじゃないってことか???
柴田の頭でハテナがついたり消えたり…。

でもそれを言ったらクロアチアもまだシェンゲンじゃない。
クロアチアで買ってる「全ヨーロッパ使い放題SIM」なんだから、ボスニアでも使えるはずでしょう!?

と違いをよく考えたら、ボスニアって、

クロアチアと同じで、シェンゲンではない

クロアチアと同じで、ヨーロッパ

でも、
クロアチアとは違ってEUではない!!!
↑↑↑↑↑↑↑
これだ↑↑↑↑↑↑↑

SIMがボスニアに入った途端に使えなかった理由がただの不具合じゃないとしたら、これだ。
ややこしい…協定いろいろあってむずい…

EUというのは欧州連合で、この国同士の人達が行き来する場合はパスポートがいらなかったり、通貨の統一や関税の撤廃などがあるらしい。

といってもクロアチアの通貨は今でもユーロではなくクーナを使っているから統一が全てできているわけでもなさそう。
このEUに、ボスニアは加盟していない

シェンゲンにはボスニアもクロアチアも加盟していないけど、だからこそ私は今回シェンゲン内での旅も多かったからそろそろ90日ルールを越えてしまうんじゃないかという危うさの中、
拠点がクロアチアだったことで助かっているし
ボスニアもシェンゲン90日のカウントには入らないのがわかっていたから来た。帰国ギリギリでうっかり越えてしまったらつまらないから私のセーフティーゾーン。

ちなみにこれは単純にシェンゲン内の滞在をこれ以上増やさないためにしているだけで、シェンゲン以外に出たからってカウントがリセットされるわけじゃないからここも注意が必要。

たとえばシェンゲンのスペインで80日過ごした後にクロアチアかボスニアに出たとしても、その1週間後にまたスペインに入ったら81日目になる。
もう10日も居れないよーーっていう。

でもシェンゲン以外の国で6ヶ月過ごした後なら、これがリセットされてまた90日いられる。
これがシェンゲンの180日の中の90日ルール

とにもかくにもせっかくのSIMが使えなかったのでがっかりしたんだけど、そのホストが連れて行ってくれたタバコ屋さんでなんと2€で1週間、5GBのSIMが買えた。安い!!

ローカルのSIMだから安かったんだけど、ローカルなものはアクティベイトが必要。差し込んだらまず何番かに電話をかけて数字を押すような作業をしなくちゃいけなくて、それもホストが全部やってくれたから助かった! 

ツーリスト用の方が簡単でも高いのは間違い無いから安く済ませたい人はこんなして現地の人にお願いするか、買ったお店の店員さんにアクティベイトまでおねがいしよう。 

YouTubeや動画の重たいアプリのモバイルデータはオフにしてたけど、他は普通にがんがんネット使って4日後にボスニアを出るまで切れることなく使えた。


てくてく歩いて広場に出ると、引くほどの鳩。

ぎゃーーーー

餌を腕や肩に置いて鳩たちを身体中にとまらせて写真を撮る人たちもよく見られたけど、
こっちは う○こされないんかなーこの人たち!と気が気じゃない。
鳩も可愛いけどさ…こんだけ群れてたら運がない奴でも簡単にう○こ貰いそう。

そして広場から少し入るとお土産屋さんやカフェが並ぶ通りでいきなり異国情緒あふれてて可愛い。

銀食器や金にランプに絨毯に…トルコにでも来たのかな。

アンティークのカフェも、ここは有名らしくて観光客ばっかりだったけど
たしかに可愛かった。

トイレも電話やビリビリのテレビがついててヘンテコなのに生理用品からメイクグッズまでなんでも置いてあって女の子に優しすぎた。
そこでどこかのホステルのバックパッカー集団に会ってこっちの席に混ざりなよと言われ、皆で話しながらビールも飲んだ。


ところで、

壁いろいろ剥がれてるの銃弾の跡じゃない…?

歩きながら調べると、ミサイルが着弾した跡とかも「サラエボローズ」というアートのようにして残してあったり、戦争の爪痕残りまくりの町だった。

第一次世界大戦がこの町から始まったということすらも恥ずかしながらよく知らなかった。

ハンガリー皇太子夫妻をここのラテン橋と呼ばれる橋あたりでサラエボの若者が撃ち殺したサラエボ事件をキッカケに、どんどん国を巻き込んで世界大戦が始まった。

ここで。
殺された夫妻が乗ってたのはこんな車



そこに来たということはきっと戦争を学ぶ必要があるんだろうな、とまた宿命への使命感に動かされて
ひとまず戦争ミュージアムに行ってみた。

サラエボの街にはいくつか戦争ミュージアムがあって、どれに行こうか迷ったけどマップに入場無料のが出ていたから、そこで。

猫もくつろぐここがその入り口。
ほんとだ、フリーエントリー。
あけてみると戦争中の音がながれていて、誰も居ないしなんか怖い…

ここからおそるおそる入っていったけどその柱に撮影禁止と貼ってあったからこれ以上は撮ってない。

まず、そこのテレビで流れている映像と飾ってあった展示品の服装が今となんにも変わらない。

しっかりした作りの、ブランドのタグがついた、コートやデニムや…
その格好の人たちが銃弾から逃げる映像を見たら
いきなり身近に感じてドキッとした。

戦争ってなんか遠い昔の、全然ちがう文化みたいな、実感できない存在だったから。

奥の方にシェルターみたいな戦争時に兵士がいた洞穴や、一般市民が隠れていた狭い部屋の再現もあって、いろんな仕掛けがあるお化け屋敷に入ったみたいになにか動きださないか緊張しながら歩いていると
1人やっと人が入ってきた。スキンヘッドで、なんかシリアスな顔つきの男性。
私と同じようにここを覗きにきたお客さんかと思ったら、そのミュージアムを作った張本人だった。

映像を観ながら少しずつ話し出した。彼の名前は彼のお父さんのコードネームからとった「ゼロワン」(もちろんニックネームだけど)で、このミュージアムと、近くに戦争ホステルまで作っているけどまだ30歳。私よりも歳下だけどすでに戦争の経験者、生き残り。なるほどここの戦争はやっぱりそんなに最近の話なんだと本当になにも知らなかった私は口が開きっぱなしになった。

彼が体験したのはこの街での1992-95年の戦争。
皆に学んでもらいたい、知って考えてほしい、だから無料公開と寄付のこのスタイルでここを作っていると。
この街で今も賑わっている市場もミサイルが落ちて一般市民がたくさん亡くなったところ(人数の問題じゃないとおもうけど60人以上)。

その市場

ちなみに戦争って大きく言っても経済や技術の成長や何かを始める体裁のために必要な戦争と考えたり、受け取り方も向き合い方もいろいろあるんだろうけど彼は経験者としてこうやってミュージアムまで作って戦争をどう捉えてるんだろうと気になった。
こんなコレクションしてるから、むしろ武器や争いが好きだったりして…とか。

第一次世界大戦を引き起こした例のサラエボ事件では
この撃ち殺されたハンガリー夫妻と撃ち殺した若者と、どっちが悪いと思う?と聞いたら、
少し間があってから

「…理由置いといて、まず人を殺してるからこの若者」

とごもっともな解答。 
サラエボ人として乱暴なことを言ってもおかしくないと思ったけど客観的な答えだった。

ついでに、注目を集めてなにかをしたかったけど撃ち殺したあとそのまま捕まって牢獄で死んだから結局そのあと何も出来なかった愚かな青年だよ、というようなことも言っていた。


私が知りたいマンなのを察したのか
そのあとも手動でラジオを流すのとか重たい水の運び方とか色々教えてくれはじめ、私があれこれ展示品を見て気になったことに次々答えてくれた。

そして1番私がぎょっとしたのがこの、今でもこのへんに埋まっている地雷の数。

地雷が森の中でどんなかんじで埋まっているかもショーケースにあったけどあんなもん、見えるわけがない。余裕で踏む。そして3キロでそれは爆発する。アッと思ったらもう吹き飛んでいる。

うちで前に飼っていたメインクーンってバカでかい種類の猫は9キロあった。猫踏んじゃったで爆発しちゃうんだ。

しかも映画でよく見るあの踏んでからドキッとして皆で顔を見合わせて、足を離す時に爆発するからなんとか他のオモリを足と入れ替えて逃げようとするやつ、あれは映画用の設定で実際は踏んだ瞬間に爆発するらしい。 

自然の方を自由に歩き回ったら危険だよ、というから

「え?!こんなにあるの?!?!すぐ近くじゃん!!まだこれ爆発するの?」

「する。この素材じゃ何十年でもまだまだ壊れたりしないよ」

「へ?!え…なんで除去しないの?」

「ひとつ設置するのは簡単だけどひとつ取り除くには莫大なお金がかかるんだ。ぜんぶ片付けるお金なんてないよ。それに危ないし」

「踏んじゃうじゃん!!!」

「町の人は皆これがまだまだあるのを知ってるからそんなところに近づかない。君や知らない観光客は危ないけど、だから知らなくちゃならない」

「え、え、町の中は平気なんだよね?私がハイキングに行って踏むかもしれない??」

「ハイキングに行ったら踏めるね、そしてこのサインがある」


「あぁ、この看板を見たら絶対近づかなければ大丈夫なのね」

「でも大丈夫な道を調べて知っている人と入らないと危ない。この看板があるし、皆知ってるのに、それでも年に2人くらいは踏んで死んでる」

「なんですって!!」

「もれなく全てにこの看板がしっかりついてるとも限らないし。看板を立てるのだって、無料じゃない。地雷を除去する作業だって間違って吹き飛ぶかもしれない危険な仕事だよ」

…。

どっかの億万長者の皆様、
とりあえずこれらを安全に処理しません???



ゼロワンは、少人数で値段も高めの特別なツアーも頼まれればやっているらしく、山に入って実際に地雷がある場所を見て歩くんだって!

これは本当に危険だから勝手にふらふら歩くような人や子供は勿論連れて行けないけど、
ちゃんと説明してから入るから皆怖がってガイドが通った道だけを綱渡りのようについてくるらしい。

ゼロワン達が事前に機械を使いながら調べて何度も歩いて道順を決めて、そのツアーをやってるそうです。
参加する方は、まじでふざけたら死んじゃうからね🥺

ゼロワンの話にあんぐりしていると、
あとは今日どこに行きたいの?と聞いてくれて、

ボスニアコーヒー飲みに行こうと思っていたのと、なんか良い景色を知ってたら行きたいなぁというと
車を出して、景色の良い高台にあるカフェに連れていってくれた。

ボスニアンコーヒー

ボスニアコーヒーもトルコのみたいに濃くて、甘いお菓子がいつもついてくる。
粉が少ししずんだらその上澄みをカップに入れて飲んでを3回くらい注ぐともう粉も入ってきちゃうかんじになって「もうそのへんで充分。おわり」

日本でほとんどコーヒー飲まない私だけど海外だとネット使うにも充電するにもカフェ入ってコーヒー飲むのが1番安いし、

皆なにかと、いちいち、コーヒー飲みに行くから
なんか飲むようになっちゃうんだよなぁ。

そのカフェからの景色

そのあとも、ゼロワンが自分で作ったという電動バイクみたいなのに2ケツしてサラエボ見学。

ここなんか渋くて好き
サラエボの、橋

モスタルという町も観光客に人気で、クロアチアからの日帰り旅行でもよくツアーが組まれてる場所なんだけど、そこの名物の「古い橋」よりも実はここの橋が1番古いらしい。

このサラエボの橋は自転車か車でもないと微妙に遠いところにあるからあんまり観光名所にはなっていないようだったけど、地元の人はこの橋にくるまでの長い人通りの少ない道でデートしたりイチャイチャする有名な場所なんだって。
ロマンチックな道にはちっとも見えなかったけど。

橋は立派だしその下を流れる川も、夏は泳いでみたい。ゼロワンも子供の頃にその川でお父さんに泳ぎを教わったって。

命綱つけてても…

その途中にクライミング名所だった崖もあったんだけど、ここでも2人落ちて死んだんだよーと看板を見せられる。死んだ人の話ばかり聞いてる気がするなぁ。

これはおばあちゃんの歯と呼ばれている岩。

なんで、どのへんが婆ちゃんの歯なの?と聞いたら「一本しかないから」だって😂 かわいい。。


そのあと自分が経営する戦争ホステルも見学させてくれたんだけど、
そこにはサラエボを離れてから3日後に戻ってきた日に一泊させてもらった。

私はサラエボに着いた後、
モスタルやブルガイにも行ってまったりしていたんだけど、最後ザグレブに帰る時にまたここに帰ってきて、その日に丁度誕生日だったゼロワンの誕生日祝いをしたのです。

といっても彼はお酒を飲まないしタバコもシーシャも吸わない(健康をとても意識しているらしい。31歳になったばかりなのに)からジュースを奢っただけだけど。

それでもシーズンオフで他にお客さんもいないし
日本人にも戦争を考えてほしいから、ということでこのときのジュース代だけでホステルの宿泊代ということにしてもらっちゃった。

それはありがたいし、興味深いから
泊まらせていただいたけど…

共有ルームの展示品
こっちも戦争博物館みたいなマニアックすぎる共有ルーム
戦時中を再現してキャンドル(偽物)となんか針金みたいなベットに、燃えたり虫のつかない布が敷いてある
絨毯みたいな生地だとベッドバグが心配だと言ったら「これは出ない生地で下が木じゃないからベッドバグは生きられない。絶対に大丈夫だからもし出たら200€こっちが払う」だって。


こわい!!!

兵隊さんの服がかけてあるとこで1人で寝るのちょっと、、

ドミトリーで他のお客さんがいないと普段はラッキー!と思うのにここだと心細い🥺

寸前まで、寝てる間に怖くならないか不安になってゼロワンの部屋で寝かせてもらうか迷ったけども…
疲れてて1人でしっかり睡眠をとりたかったし
勇気を出してホステルで寝てくる!と決めていざ入ってみたら、
深夜でも上の階からゼロワンのご両親の声や音楽が漏れて聞こえてきてて あ、大丈夫そ、と。
どうか私が眠るまで起きていて、母ちゃん父ちゃん!

針金みたいな、鉄格子みたいなベットも、
横になるといいかんじにしなって硬めのハンモックで寝ているような感じ。毛布も暖かいし意外にも快適。

ゼロワンに「どこのベット使ってもいいよ、でも下にすれば」と言われた時に「なんで?」と聞いたら「きみ落ちるかもしれないから」と言われて、

あぁ!たしかに!とその助言を受け入れたんだけど、これは本当に、落ちれるわ。

ドミトリーな寝室 ベットに柵がついてない…
1番上の段は荷物を置ける場所

寒いからヒーターつけてくれてたのに、怖くて廊下とのドアをあけっぱなしにしてたからあまり暖まらなかったけどもそれで玄関の光も入ってきたし、
寝室のキャンドル風ライトも全部つけさせてもらって、
すぐ眠れた。

怖くて変な夢見て起きちゃったらどーしよーーーーとか思ってたのに朝まで熟睡。なんなの私って。

町中の永遠の炎で暖まってる人も



初日寒かったサラエボは天気が良くなるといきなりポカポカになってお散歩日和に。



モスタルにも行ってきたら更にボスニアを知ることができたし天気も良くて沢山素敵な景色も撮れたので次の記事も是非!


またねー🐱🕊🕊🕊




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