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渋滞の車の列がさっきから動かない

冷めてしまったコーヒーでも悪くないと思えるほどに

世界を許してしまっている

ちょっと顔が見たかっただけで、別に何も求めてない

買った詩集は三分の一まで読んだ

微熱にうなされながら大して好きでもない曲リピート

私が海に行った理由が書いてある


これでいいよね?が口癖だと誰かに指摘された

仕事が上手くいかなくてその度に花を買い込む

とまり木を探す小鳥のような緩さで肩の埃を払う

好きな季節を聴かれたら今年は六月と答えよう

もうすぐジグソーパズルが完成する

でも永遠に完成させてあげない

私が海に行った理由が書いてある


胸が苦しい時は台所に逃げる

風がしきりに窓を叩いて誰を起こしているのか

帽子を被ってから観たい映画を探す

去年旅先で買った帽子だ

道を聞かれても答えられずにっこり笑うしかなかった旅先だ

私が海に行った理由が書いてある


子供服売り場を通る時にだけ平凡な人になる

それは自慢したくなる程で嫌いな景色はそのままにして

写真さえ増やせばいいと思ってる

足がすくむような場所で

業を出来るだけ増やして長生きしようと思う

波の砕ける音がする

私が海に行きたい理由が書いてあった


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お読みいただきありがとうございます。ココア共和国4月号において佳作に選んでいただいた作品です。
7月もお知らせがいろいろありまして、私が参加させていただいてます、詩誌Recipe夏のセットがいよいよリリースとなりました。ダウンロード無料ですので興味がありましたらどなた様もお気軽に。

読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。