鉛筆削りが欲しかった!
ぼくが子どものころ、我が家に鉛筆削りは置いてなかった。
それは父の考えによるもので、鉛筆はナイフで削るものと決まっていたからである。
だからぼくも小さいころからナイフを持たされて鉛筆を削る練習をさせられたものだった。
学校の教室には電動や手動の鉛筆削りが備えてあって、ぼくはこっそりとそれらを使ったものだった。なぜなら、鉛筆削りを使ったことがバレると父に怒られるからであった。
今でこそ、カッターナイフで鉛筆を削ることなどお茶の子さいさいであるが、小さい頃はナイフで削るのが本当にいやだった。そして、据え置き型の鉛筆削りが欲しくてほしくてたまらなかった。
中学になるとシャーペンになった。鉛筆を使わなくなって、鉛筆削りのことなどすっかり忘れてしまった。
それから何十年も過ぎた。
ぼくに子どもができて、また鉛筆の季節がやってきて、ぼくは鉛筆削りをひどく懐かしむようになった。よし鉛筆削りを買おうと思った。昔ながらのどっしりとした鉄製のやつがよかった。たとえ数年しか使わなくても、何十年ももつやつがよかった。
そしてカール事務器という会社が作る鉛筆削りを買った。
カール事務器は東京都葛飾区立石にある会社で、鉛筆削りは日本製だった。下町の会社が昔からずっと変わらずに作り続けている、そんなカタチの鉛筆削りだ。
さっそく娘の鉛筆を削ってみた。ああ、これだこれだ。この感触だ。そうそうこれが欲しかったんだよなあ。
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