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野外教育のススメ「スウェーデンの幼児教育から学ぶ子どもの視点に寄り添う保育」|(イベントレポート)

先日、宮崎県青島青少年自然の家さん主催の「野外教育のススメ」というオンライン研修会に参加しました。

講師はスウェーデンの野外就学前学校に、保育士として勤務されている巽朝菜(たつみあさな)さん。「スウェーデンの幼児教育から学ぶ子どもの視点に寄り添う保育」をテーマにお話を伺いながら、自然物を使ったワークや参加者同士が対話する時間もありました。

特に印象深かったことを、まとめておきたいと思います。

野外教育のポイント

同じ場所で同じような経験を繰り返す中で、目新しさや反応が減少していく過程を発達心理学の用語で、馴化(じゅんか)と呼びそうです。馴化した状況を改善するためには、見慣れた場所に異なる刺激を与え、刺激に対する反応を復活させていきます(脱馴化法)。普段の景色や風土に刺激が与えられることで、私たちは新しい視点で見ようとします。

森のようちえんの活動でも、拠点としている場所や頻繁に遊びに行く場所があります。その中で、「馴化と脱馴化」については意識しているのですが、用語として聞いたのは初めてでした。

今回の研修会では、日々の活動を脱馴化させていくための視点をたくさんもらったように感じています。

自然物を使った自己紹介

今回の研修会に参加する前に、講師の巽さんから、「毎日通う道(通勤・通学・買い物など)で<自分らしい>と思う自然物を拾って来てください。」というお題をもらっていました。私は家が薪ストーブで、この時期にはたき火もめちゃめちゃするので、焚き付けによく使う杉の葉を準備していました。

この自己紹介では、自分が準備した自然物は隠した状態で(秘密にして)、そのものの形や落ちていた状況を説明し、さらにどんなところが自分らしいかを表現します。答え(何を拾ったか)を秘密にすることで、アクティブに聞く空気が生まれていくのを実感できました。

参加者の中には、枝を拾っていた方が3人いたのですが、拾った枝の形や自分らしさの表現がそれぞれ違ったのもおもしろかったです。

「自分自身を知って表現する機会があること 」
・「子どもが自分自身とまわりの環境について理解を深められるようにすること」

は、スウェーデンの就学前学校(プレスクール)の学習要領にも、記載されているそうで、こうした自己紹介の機会に自然物を使うことは多様性を理解する際にとても理解しやすいなあと思いました。自然物には同じものは1つと無いし、そしてそれは人間にも当てはまるからです。

もう1つ、「毎日通う道(通勤・通学・買い物など)で、《ハッとした自然の景色》を1枚撮影し、送ってください。」という課題もありました。こちらは時間の都合で実践できなかったため、巽さんが課題の意図を紹介してくれました。「ハッとする」と言っても、いろいろあって、驚きなのか、幸せを感じているのか、(笑)みたいな感じなのか、言葉の感じ方や受け取り方は1人1人違うわけです。だから、分かった気にならず、コミュニケーションをとっていくことが大事だよねと。

子どもの視点って?

スウェーデンの教育の土台には、「子どもの権利条約」があります。子どもの権利条約は、1989年に国連で採択され、日本も1994年に批准していますが、その後、国内の状況はあまり変わっていません。一方、スウェーデンでは、子どもの権利条約が社会に浸透しているそうです。

スウェーデンの公文書では、「子どもの視点」を定義していて、その時に紹介されたイラストがとても分かりやすかったです。

まず、子どもの視点と、子どもへの視点は違うということ。子どもへの視点とは、大人から見た子どもの視点です。言われてみると当然だけど、私たちは無意識のうちに、大人から見た子どもの視点を子どもの視点と錯覚して、物事を考えたり、判断したりしてはいないだろうかとハッとしました。子どもへの視点と子ども自身の視点が合わさってはじめて、子どもの権利の視点になるということは、忘れないよう、心に留めておきたいです。

こうした子どもの権利を学ぶために、スウェーデンの野外プレスクールでは次のようなことを実践しているそうです。

①子どもの権利条約の責任者の配置 2名
②子どもの権利条約を子ども自身が学ぶ機会を毎週設ける(権利を行使するために、子ども自身が権利について学ぶことだが大事)
③教育的ドキュメンテーションを共有(子ども・保育者・保護者)
④子どもの権利条約の日11月20日に行事をする
⑤3週間に一度、全職員で子どもの権利について振り返りをする

実際、子どもの権利条約が浸透したスウェーデンの教育にも課題があって、子どもの意見を(無条件に)聞きすぎることによって、学級崩壊が起きている事例もあるそうです。子どもの意見を聞くことは大事だけど、どのように聞くか、どこまで聞くか。

研修の中でも、年上の子どもたちがいつも同じ遊具や場所を使うことに不満を持っている年中さんの話をどのように聞いて、どのように解決していくかについて、参加者で話し合いました。これは、巽さんが勤務されている園で実際に起きたことだったそうですが、参加者同士で出した案について、実際はこうしていったんですというお話を聞くことができて、学びが深まりました。

個の尊重と集団の尊重のバランスは難しいですね」と、巽さん。ずーっと考え続けなきゃいけない課題だし、だからこそ対話がとても大事だなと思いました。

学んだことを実践していきたいです。

私が巽さんのことを知ったきっかけでもあるこちらのpodcastも、とてもよかったのぜひ!

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