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西田親生の自由気まま書・・・『生』

 『竹』で描いた、漢字一文字『生』である。土から力強く突き出た『竹』が、ニョキニョキと『生』となる。

 『竹』と言えば、幼い頃に随分世話になった某市の市長さんがいた。5期連続の長期政権を握った大物市長だったので、当時、全国市長会会長などを歴任し県議となったが、暫くして病に伏して、政界を去ったと記憶している。

 今でも理由は判らないが、市長さんのご自宅に泊まることになった。当日の午前中に、市長さんより『筍』を掘って来いとの指示があり、独りで釜を担いでご自宅の裏山に足を踏み入れ、力ずくで『筍』を数本引っこ抜いた。ところが、それらが伸び過ぎの『筍』ばかりで、ご自宅へ運ぶと、皆が腹を抱えて笑った。

 結構、気合を入れて持ち帰ったものの、食用には使えないようで、がっかりしたことを思い出す。ご自宅横には大きな池があり、錦鯉も泳いでいる。古墳なども近くに点在しており、普段とは異次元空間だが、長閑でとても楽しい外泊となった。

 歴代の市長の中では、比べようのないほどの大物だったことは、子供ながらに肌で感じていた。父の心友と言うので安心して行ったものの、一緒に食事をすると、大物のオーラが突き刺さってくる。

 市長さんは遠視だったのか、メガネをやや下にずらした格好で筆者の目を見て話す。流石に目は鋭かったが、その奥はとても優しく感じた。腹の底から響き聞こえる野太いバリトンの声。もし、夢でも再会ができるのならば、次回は一端の大人として人生を語り、食用サイズのまともな『筍』を掘ってみたい。

『生』

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